工務店経営を成功させるためには、ただ良いアイデアと実行力を持っているだけでは不十分です。アイデアは実行した上で、効果検証、地道な改善活動を重ねて初めて大きな成果になります。
これは経営だけではなく、集客や営業にも通ずることで、近年はこの試行錯誤の工程をPDCAと呼びます。本コンテンツでは工務店向けのPDCAの回し方について改善します。
- PDCAとは何か?
- PDCAのうち特に「C:Chek」と「A:Actin」を円滑に回すためのポイント
- 工務店でPDCAを回す例
本コンテンツの学習にかかる目安時間は5分〜10分程度です。
本コンテンツの目次
工務店にありがちな「やりっぱなし」
工務店においてありがちなのが営業や集客の「やりっぱなし」です。
やりっぱなしとは、例えば新しいイベント集客のアイデアを思いついて実行したものの、そのイベント集客で成果が出たのか検証できていない(漠然と来場者が喜んでいた気がするなどの定性的な結果分析しかできない)、お客様の営業状況をきちんと会社全体で管理しなければダメだ!と号令がかかっても、実際には誰も自分が担当している顧客の状況以外は良く分からないといったパターンです。
これらの「やりっぱなし」が発生すると集客策がまぐれ当たりしたときは業績が伸びるけど何が良かったのか原因がよくわかっていないので再現できない、色々工務店の成長のためのアイデアは出すものの根付かず、同じような業績で停滞するといった問題が発生しがちになります。
こういった「やりっぱなし」を解消し、工務店の経営を前進させるためには「PDCA」を意識することが重要です。
PDCAとは?
PDCAとは「Plan(計画する)」、「Do(実行する)」「Check(検証する)」「Action(改善する)」の頭文字をとった用語で、ビジネスを前進させるための工程の事を指します。
新しい施策を企画して、それに可能性があると思えば実行、実行した後はどの程度の成果が出たのか検証して、施策をより精度の高いものにするために改善するといった一連の流れがPDCAです。
「PDCAサイクル」という表現を聞いたことがあると思います。これは、PDCAの最後のステップである「Action(改善する)」が完了したら、また新たに最初の「Plan(計画する)」にもどり新たにPDCAを始め、PDCAを何度も行ことを指します。
「P」:Plan(計画する)
施策を計画する段階のことを指します。計画の際に重要なことは期限と目標です。期限を決めないとスケジュールが遅れてD(実行)の部分が進行しなくなる、目標を決めないとC(評価)の段階で効果検証ができなくなるといった問題が発生しがちです。
初めての施策を実施する場合は、期限や目標がまったく想像つかないといったケースも考えられるかもしれませんが、D(実行)、C(評価)をスムーズに進行するためにも目標設定はするべきです。
「D」:Do(実行する)
計画を実行する段階のことを指します。どれだけPを綿密に計画してもDの段階になると計画通りに進まないといったことはよくあります。もちろん、Pの通りに実行することは大切ですが、細部については臨機応変に対応してください。
また、D(実行)にあたっては進捗を管理することが重要です。目標アポイント数に対して何件架電したのか、メルマガ配信の反響はどの位なのか、後どのような作業が残っているのかなど見える化し、実行状況を可視化することにより進捗管理が容易になります。
「C」:Check(評価する)
実行した結果を評価・分析するフェーズです。評価の仕方は施策によって異なりますが、定量的に成果を測定しないと善し悪しを客観的に把握できません。Webマーケティングの場合はシステムから定量的に数値が計測できますが、チラシなどのWeb以外のマーケティングは数字を測定する仕組みを考えておく必要があります。
「A」:Action(改善する)
効果検証・評価によって発見した改善点を洗い出して、今後同じ施策を実行する際の精度を高めます。
改善策には、簡単な対策で改善できるもの、設備投資を伴うもの、人材育成が必要なものなど改善の難易度や期間がそれぞれ異なるさまざまなアイデアが発生すると考えられます。
全ての改善策を並行して行うのではなく優先順位が高い、難易度が低いものから改善するようにしてください。
「PDCA」の目的とは?
PDCAの目的は「やりっぱなし」を解消して、効果を検証しながら営業・集客などの成果を高めることにあります。
PDCAを円滑に回すことによって、単なる思い付きからはじまった施策を工務店の集客や営業の戦力に昇華させられますし、無駄な施策については見切りをつけられるようになります。
再現性の高い経営・集客・営業のためにもPDCAを回すことは必須です。
特に疎かになりがちな、「C」と「A」
工務店において特に疎かになりがちなのが「C:Check(評価する)」と「A:Action(改善する)」の工程です。やりっぱなし病に陥っている工務店はCとAが会社に根付いていないことが多い傾向があります。
というのも、PDCAにおいてPとD(計画と実行)はアイデア豊富、実行力のある経営者や幹部であれば容易に可能ですが、CとA(評価と改善)はどちらかと言えばテクニックや知識が必要になります。
CとAはどうすれば行った施策の効果検証と改善が行えるのかを方針立てられる人材が存在しないと成立しません。そのためには施策に対しての効果検証策が立案できる、効果を見て改善のポイントを見定められる、工務店の経営・営業・集客などの知識や経験を持った人材が必要になります。
中小規模の工務店であればまずは社長がこの役割を担うべきですが、実際には社長といえどもプレイングマネージャーなのでPDCAに割く時間がない、そもそもPDCAの経験は少ないので工数が見えないので、工数が見える仕事から着手して結果後回しになってしまうといった問題が発生しがちです。
工務店全体で「C」と「A」を円滑に回すためには
工務店経営においておろそかになりがちな「C」と「A」を改善するポイントは大きく分けて次の3つです。
- 「P」の段階で「C」と「A」の計画も作る
- ルーティンワークに関するPDCAは会社のルールの中に組み込む
- 目標を細かく分解する
「P」の段階で「C」と「A」の計画も作る
「C:Check(評価する)」と「A:Action(改善する)」をどれだけ正確にできるかは実は「P:(計画する)」の段階での企画の練りこみ方によって成否が分かれます。Pの段階で何を目標にするのか、それを測定するためには何をしなければならないのかを企画してください。また、目標を達成したか否かだけではなく分解した指標についても検証すべきです。
例えば、売上を目標にする場合でも、売上を確認するだけではなく、売上=問い合わせ数×成約率×客単価と3つの指標に分解したり、問い合わせ数をWebやチラシなど集客経路別に計測できるようにしたりする工夫が求められます。
計画を細かく立てすぎると遅きに失してしまうのでスピード感は必要ですが、少なくとも効果検証のプラン策定は計画段階で行ってください。
ルーティンワークに関するPDCAは会社のルールの中に組み込む
日常的に実施している業務のPDCAを回す場合は、会社のルールにPDCAが回る仕組みを構築する必要があります。
例えば住宅営業の例では、日報制度などの仕組みを導入して、会社のルールとして営業状況を報告する仕組みを構築、上司がそれを見て適宜フィードバックを実施することによりPDCAが回るようになります。
工務店のルーティンワークのためには他にも施工管理アプリをはじめとするさまざまなPDCAのためのシステムがありますので自社の悩みに合わせた解決策を探してください。
目標を細かく分解する
PDCAを実施する際の目標設定は「改善案が出せる程度に細かく」設定することが基本です。
例えば、売上が目標より少なかったという結果が分かっても、改善策を立案するのは困難です。しかし、売上=問い合わせ数×成約率×客単価なので、これら3つの数値を検証してどの数字が低いのかを確認できます。そして客単価が想定よりも低いことが判明すれば「客単価をあげるための追加提案のためのロープレの徹底」「追加提案のパッケージの見直し」といった施策を改善案として立案できます。
工務店におけるPDCAの回し方例
工務店におけるPDCAの回し方は上記のとおりですが、工務店において具体的にはどのようにPDCAを回すのか具体例をいくつか紹介します。
展示場誘導の際には必ず発生したコストを検討する
住宅展示場は工務店集客にとって重要な手段です。住宅展示場へ誘導するためにはマーケティングのためにコストが必要で、このコストパフォーマンスを高めるためにはPDCAを回す必要があります。
例えば、Webマーケティングとチラシどちらの施策で展示場へ誘導した方が良いかを検証する場合は、両方の施策に関わった広告費を来場者数で割ってCPA(1件当たりの来場者獲得コスト)を算出し、どちらが低いのかを確認します。
CRMツールで顧客毎の状況を可視化する
検討が進んでいないお客様にいきなりクロージングをかけても成約しませんし、逆に発注する工務店を決定しようとしている段階のお客様をいつまでも放置していると勝機を逃がしてしまいます。よって、顧客管理にもPDCAは必要です。
近年はCRMツールといって、お客様とのコミュニケーション履歴を保存、商談を管理するためのシステムも多くの工務店が導入しています。こういったツールにより、そのお客様に対して営業活動どんな営業活動が良いか計画(Plan)を立てることができますし、その結果のCheck(評価)も容易になります。
参考:見込み顧客管理のポイント
PDCAは工務店経営の基本
工務店に限らずあらゆる業種・業態でPDCAを回すことは重要命題です。日々の業務に忙殺されてPDCAが回せないと、頑張っていても工務店の業績はあがりません。顧客管理、日常の業務、マーケティングの効率化、施工管理などあらゆる業務においてPDCAが求められるので、会社としても従業員単位でもPDCAが回る仕組みを構築していきましょう。