工務店経営において重要だけれども見落とされがちなのが「集客戦略」です。集客はしているものの行き当たりばったり、色々実施しているがどの手法が集客に貢献しているか分析できていないという工務店は意外と多いです。本コンテンツでは工務店の集客戦略の立て方について説明します。
- 集客戦略とは何か
- 集客戦略の作り方
- 集客戦略のPDCAの回し方
本コンテンツの学習にかかる目安時間は10分〜15分程度です。
本コンテンツの目次
集客戦略とは?
「集客戦略」とはその名の通り、見込み客を集めるための戦略のことを指します。工務店が売上を上げるためには営業をして契約を獲得しなければなりませんが、そもそも営業をするために集客で見込み客を集めなければなりません。
営業に自信がある工務店でも集客は意外と、モデルルームマーケティングをしたり、チラシを配布したりとなんとなく見込み顧客集めを行っている工務店が多く、この「集客」部分を改善することによって大きく業績を向上させられる可能性があります。
集客は思い付きではなく、計画が大事
単なる集客ではなく後ろに「戦略」という言葉がついているとおり、集客においては戦略が非常に重要です。
集客にあたってはチラシの配布料金、Web広告の費用といったように一般的に広告費が発生します。この広告費をなんとなく使って集客をしていると、実はコストパフォーマンスが悪い集客をしていた、少し広告手法を改善するだけでもう何棟分か受注できていたけどそれに気づいていなかったということが往々にして発生します。
ビジネスにおいてはPDCAを回さなければならないと言われることがありますが、事業の中でも集客は最もPDCAで改善できる可能性がある工程です。
せっかく良い工務店でも集客が下手では業績が伸びない?
せっかく技術力はある、良いデザインをするのになかなか業績が伸びないといった工務店はよく存在します。良い仕事をしていればお客様がついてきてくれるというのは一面的には正しいですが、そもそもお客様に仕事の確かさをアピールする、技術力だけではなくホスピタリティーなどを含めて総合的に顧客満足度を高めるためにはこの集客の視点が不可欠です。
「広告費をかけるのはもったいない」と言われることがありますが、受注棟数を増やそうとすれば広告費は不可欠で、コントロールできる適切な広告費は会社の成長に大きく貢献します。サービス自体は良いはずだけれども伸び悩んでいる感じがするという工務店は一度「集客」の見直しを行うのが業績向上の近道です。
「集客」と「広報」の違い
ちなみに「集客」と同じような言葉で「広報」という言葉がありますが、若干意味は異なります。集客は見込み顧客を集める活動なのに対して「広報」とはお客様の関係づくり全般を指す言葉です。
例えば、地域の公共団体に何かを寄付してそれをメディアに取り上げてもらうというのは直接お客様集めには結び付かないので「集客」ではありませんが、お客様のイメージを良くする関係づくりの一環なので「広報」ではあります。
工務店の広報のあり方については工務店マーケ内の「工務店の広報戦略の立て方」で説明していますので、合わせてご確認ください。
誰が集客戦略に責任を持つべきか?
工事は現場監督、営業については各お客様を担当している営業担当者と業務によって責任者がいるものですが、工務店における集客戦略の責任者は経営者が担うべきです。
というのも集客には広告費が発生するので、一社員だけでは機動的な予算執行が行いにくい、営業や工事の状況などを確認して消化できる範囲の仕事量になるように受注をコントロールしなければならないので、会社の経営全体を見通せるポジションの人物が責任者となるのが望ましいです。
もちろん、具体的な業務自体は事務スタッフや外注先を活用しても構いませんが、全体の統括はトップダウンで行うべきです。
集客戦略の作り方
集客戦略を遂行するためには、まず計画を作成しなければなりません。初めて計画を作る場合は精度が低いこともありますが、大した問題ではありません。計画を作って、実行、結果を分析、改善といったようにいわゆるPDCAが回せるようになれば自然と集客の手法は改善されていきます。計画を作る際は次の4つのステップに従って作成します。
- 目標棟数と広告予算を設定する
- 目標を実現するための人材・具体的な施策を決定する
- 担当者・外注先を決める
- 効果測定の方法・頻度を決める
目標棟数と広告予算を設定する
まずは目標と予算を設定します。工務店が受注できる案件のキャパシティと資金繰りを考慮しながら、目標売上(件数)と広告にかける予算を決定します。
目標売上は、工務店の1件あたりの平均受注金額×受注棟数で決定できます。広告予算については目標受注金額の約3%(集客になれていない場合は4~5%)をひとまずの目安としてください。
広告費は先に費用として発生、見込み客を獲得してから実際に住宅を建ててお金をもらうまでには何か月も後なので一時的に資金繰りは悪化します。資金繰りに無理のない範囲の広告費の金額も考慮しなければなりません。
目標を実現するための人材・具体的な施策を決定する
目標棟数と広告予算ができたら、担当者や外注先を決定します。一般的に住宅営業の専門家はいても、住宅営業のマーケティングに造詣の深いスタッフは社内にいないことが多いです。
集客に挑戦する初期段階はマーケティングコンサルタントやWebマーケティング会社などの外注を活用して徐々に社内にノウハウを蓄積していくのが良いです。
これらの外注先に頼めば広告予算と目標棟数を元に、具体的にどのような施策を実行するのか計画も立ててくれるので、集客戦略を効率的に進められます。もちろん、工務店マーケ内のコンテンツで紹介している集客手法を見ながら自身で集客に挑戦するのも良いです。
営業・マーケティングの部署が円滑に連携できるようにする
担当者・外注先が決まれば、次はそれを実現するための仕組みを作らなければなりません。一般的に集客はマーケティング担当者、営業は営業担当者として別の専門性を持った人材を行うことが多いです。
よって営業・マーケティングの部署間の連携がスムーズに行えるように仕組みを整えなければなりません。顧客管理システムを使って営業・マーケティング担当者がお客様情報をスムーズに共有できるようにする、マーケティング担当も参加する営業会議を定期的に開催して両者の意思疎通を図るといったように集客→営業の流れがスムーズになるように連携できるような施策を考えます。
参考:見込み客管理のポイント
効果測定の方法・頻度を決める
計画と担当者、営業・マーケの連携方法が決まれば最後に集客の効果測定及び頻度を決定します。例えば、チラシを撒くにしてもそのチラシから何件受注できたかどのように測定するのか、どのような広告の反響率が高いのか、どのように定量的に分析するのかなど、効果検証の仕方を計画段階で決めておくことにより、後から振り返り改善作業が行えるようになります。
集客についてはCPA(1件あたりの問い合わせ獲得コスト)という指標をベースに善し悪しを検証することが一般的です。
集客手段のPDCAの回し方
集客計画はただ作成しただけでは絵にかいた餅で、実行、反省、改善とPDCAが機能してはじめて集客戦略は成立します。特に計画した集客手段が実際に予想通りのコストパフォーマンスであったかどうかは検証すべき重要事項です。集客手段を最適化するためのステップは次の4つです。
- 集客のコストパフォーマンスを分析する
- 営業とマーケティングの連携度をチェックする
- 広告予算、施策の修正プランを立てる
- 実行、再度PDCAを回す
集客のコストパフォーマンスを分析する
実施した集客施策のコストパフォーマンスを分析します。集客のコストパフォーマンスはCPAで測定するので、各施策のCPAを算出します。
もちろん、サンプルの数が少なければ結果の善し悪しの判断に大きなブレが発生するので、サンプル数が少ない施策については一概に善し悪しを判断するのではなく判断保留ということも考えられます。
営業とマーケティングの連携度をチェックする
CPAはあくまでも問い合わせ発生にかかるコストなので最終的に受注できたかはCPAだけを見ても判別できません。最終的にどの程度利益に貢献しているかはマーケティング・営業両方の意見とデータを獲得して分析しなければなりません。
集客戦略を立てて売上を上げる際にに発生しがちなのが営業とマーケティングの対立です。マーケティング側は「せっかく見込み案件を作ったのに営業がフォローしてくれない」、営業側は「マーケティング担当が作る案件はフワッとしていて成約させにくい」といったような意見の対立が発生していることがあります。
これは営業とマーケ担当者がターゲットになる顧客像を明確にしていない、お客様情報に関する連携が不足しているときに起こりがちです。定量的な数値の分析だけではなく、営業・マーケがきちんと連携で来ているかヒアリングなどによって定性的なデータも集めてください。
広告予算、施策の修正プランを立てる
上記2つのデータを元に広告予算と施策の修正プランを立てます。コストパフォーマンスが良い(CPAが目標よりも低い)施策はさらに広告予算を増強する、上手くいっていない(CPAが目標よりも高い)施策は改善の仕方を模索、何回かやってダメならやめて他の施策に予算を回すというのが基本的な方針です。
また、そもそも計画通り実績データが取得できていなくて効果検証ができなかった施策については、データ分析の手法から見直さなければなりません。
実行、再度PDCAを回す
修正した計画と広告予算を再度実行、結果が出れば再度分析、修正、再実行…といったようにこのループを延々と繰り返します。
このPDCAループを回すのにあたってはじめの計画は精度が低くても大丈夫です。きちんと結果検証が来て、修正ができるのであれば数回もPDCAを回せれば初期の計画の粗さは大した問題ではなくなります。
集客戦略は計画段階で四苦八苦するのではなく、とりあえず粗くても計画を立ててPDCAだけ円滑に回すことを意識した方が短期間で成果が出せます。
集客戦略で工務店業績の8割が決まる
なんとなく集客をしていると、見込み客が十分集まらない、経費倒れの集客施策を乱発するといった事態に陥りがちです。これを防ぐためには集客の戦略を立てなければなりません。
集客戦略においては初めの計画自体は精度が低くてもよく、計画・実行・分析・改善のループが円滑に回るようにすることの方が重要です。