着工棟数の減少により工務店のマーケティングにも変化が求められています。WebマーケティングやSNS活用のようにただ手法を時流に適応させるだけではなく、家具・インテリアを活用したマーケットを拡大させるマーケティング施策が必要なのです。
本コンテンツは工務店が取り組むべき家具・インテリアを用いた工務店のマーケティング施策とその実施の際のポイントについて説明します。
- 家具・インテリアを活用したマーケティングの方法
- 工務店が家具・インテリアを活用する際のコツ
本コンテンツの学習にかかる目安時間は5分〜10分程度です。
本コンテンツの目次
施主様確保には家具・インテリアによる集客が重要
工務店にもDXの波が到来しているのは言うまでもありませんが、ユーザーの購買行動の変化、新規着工棟数の減少などから工務店のマーケティングは大きな変革期を迎えています。工務店が今後の営業において考慮すべき3つの事項について説明します。
今後予想される新規住宅着工戸数の減少に備える
長期的なトレンドとして人口減少に伴い、新規住宅着工戸数は減少すると予想されています。2023年の野村総合研究所の予想によると、新規住宅着工戸数は2022年度の86万戸から2030年度には74万戸、2040年には55万戸と約20年弱で約35%のマーケットが減少とすると予想されています。
持家、分譲住宅、貸家いずれも漸減すると予想されていますが、持家に限定すると2022年度25万戸の実績に対して、2030年度は21万戸、2040年度は15万戸と約40%程度戸数が減少すると予想されています。
工務店の数が変わらなければ20年後には単純に一社当たり売上は単純に0.6倍になりますし、工務店同士で単純に競争した場合、スケールメリットを出せる大手のハウスビルダーの方が有利になるはずなので工務店は長期的にはマーケティング施策について検討しなければなりません。
参考:2040年度の新設住宅着工戸数は55万戸に減少(株式会社野村総合研究所)
住宅よりも買い替え頻度が高い・低単価の商材を組み合わせる
新築着工戸数が減少することを想定した場合、工務店は新築注文住宅以外により収益を上げることも検討しなければなりません。たとえば同じく野村総合研究所の調査によると新築着工戸数は減少するもののリフォーム市場は漸増すると予想されています。2022年度のリフォーム市場(広義)は実績値で7.6兆円ですが、2030年には8.1兆円、2040年には8.7兆円と20年間で約15%アップすると予想されています。
つまり新たに新築住宅を建てるのではなく、既存の住宅を改修する空間を自分好みに変化させる消費者が増えるので、工務店のサービスもそれに合わせて変化が求められるのです。
新築の注文住宅よりも買い替え頻度が高く低単価なリフォームや家具・インテリア販売といった事業に注力した方が長期的なトレンドには合致すると予想できます。
住宅販売もモノ売りからコト売りになりつつある
このように新築住宅という「モノ」を求めることから、住宅空間という「コト」にユーザーの関心が移っていることは「モノ売りからコト売りへ」というキーワードで説明できます。住宅業界に限らず多くの業界で消費者はモノを購入するよりも、モノを通じて得られる体験に関心を移しています。
工務店に置き換えると、消費者は「新築の住宅が欲しい」というよりも「自分好みの住空間が欲しい」となり、その手段として注文住宅が存在することになります。よって、消費者が欲しいのは自分好みの住空間なので、注文住宅は手段の1つに過ぎず、住空間を提供するためにリフォームやインテリア・家具といった住空間を構成するサービスを充実させるべきです。
家具・インテリアを活用したマーケティングの方法
以上のように工務店は家具・インテリアを事業の一環として付加すべきですが、具体的にどのようにマーケティングに活用すべきなのかについて3つの切り口から紹介します。
家具・インテリアに関するイベント・セミナーを開催する
工務店の中には施主様を獲得するためにイベント・セミナーによるマーケティングを実施している会社も数多く存在しますが、家具・インテリアといった切り口でのイベント・セミナーは集客において非常に有効です。
住宅に関するセミナーは住宅を建てることに興味がある消費者向けになってしまうので間口が絞られてしまい潜在顧客にアプローチしにくくなります。一方で家具・インテリアをテーマにしたセミナーは住宅そのものに不安を持っていなくても家具やインテリアで今の住空間を変えたい消費者、すなわち潜在的に注文住宅やリフォームの顧客になりうる消費者にアプローチできます。
また、ファミリー層を開拓するために夏休みに親子工作教室を開催して、簡単な家具・インテリアを作成する体験を通じてファミリー層を開拓するといった手法も昔からあるオーソドックスな手法です。
家具・インテリアで施主様あたりの単価をアップさせる
家具・インテリア提案により施主様あたりの単価をアップさせることができます。新築着工戸数は今後20年間で0.6倍になると予想されていますが、客単価が1.6倍になればほぼ売上の維持はできます。
もちろんインテリア・家具の提案だけで1.6倍になることはありませんが、こういった細かい提案の積み重ねによって客単価はアップします。工務店ならではの造作家具の提案はもちろんのこと、家具ブランドと提携しての置き家具の提案を行うことにより客単価はアップさせられます。置き家具は一見したところ面倒だと思えるかもしれませんが、買い取りではなく委託在庫やオーダーメイドといった形式で提供するのであればキャッシュフローを毀損させずに利益アップが期待できます。これは大きなメリットで受注から入金までのサイクルが長く、キャッシュフローの管理が難しい工務店においても、資金を気にすることなくサービスを付加できます。
家具・インテリアでアフターマーケットを開拓する
住宅購入時に客単価を上げるのにはどうしても限界があるので、工務店の収益を確保できるように客単価をあげるためにはアフターマーケットの開拓にも取り組まなければなりません。アフターマーケットとは注文住宅を提供後に発生するさまざまな住宅関連のニーズのことを指します。
住宅は一度建設しても数年に1回水回りのリフォームや外壁塗装などのニーズが発生します。このように住宅購入後に発生するアフターマーケットの中で頻度の高いものの1つが家具・インテリアの購入です。
ユーザーは自身の生活環境や家族構成、その時の気持ちなどで住環境を変えたくなりますが、住宅自体を変更するのは困難です。よって、家具やインテリアを変更することによってユーザーは住環境を変化させます。
注文住宅の定期点検の時に家具・インテリアの提案をするのも良い手法ですし、OB施主様向けの家具即売会を開催したり、オーダーメイドの家具を安く購入できるキャンペーンなどを設定したりしても良いです。
いずれにしても工務店がアフターマーケットで売り上げをあげる手段として家具・インテリアは重要な役割を果たします。
家具・インテリアを活用したマーケティングのコツ
家具・インテリアという切り口からさまざまなマーケティングができることは説明した通りですが、では家具・インテリアを活用したマーケティングを展開する際にどのような点に注意してマーケティングすべきなのか、3つのポイントに絞って紹介します。
自社が扱っている住宅ブランドのコンセプトを明確にする
家具やインテリアであれば何でも取り扱えば良いというわけではありません。自社が扱っている住宅ブランドのコンセプトに合致しない家具・インテリアを扱った場合、かえって施主様は自社の提供する住宅サービスのコンセプトに共感できなくなり、成約率を低下させてしまう原因になります。
そのため、家具・インテリアを取り扱う場合は、自社の住宅ブランドのコンセプトに合致した商品に限定するべきです。そのためにもまず、自社の住宅ブランドのコンセプトを明確にする必要があります。そして、そのコンセプトをもとにお客様に提案すべき、家具・インテリアサービスがどのようなものなのかを定義します。
後述するように基本的には信頼できるパートナー企業を開拓した方が良いですが、もし自社ブランドに合致するコンセプトの家具・インテリアブランドが存在しない場合はそういったブランド自体を作ることにビジネスチャンスが存在する可能性があります。こういった場合は、テストマーケティングでいくつかの家具・インテリアを作成・提案して施主様の反応を見て事業化しても良いです。
信頼できるパートナー企業を開拓する
基本的に工務店は住宅を建てたり、リフォームをしたりするのが仕事なので家具・インテリアの製造に関してはノウハウが蓄積されていない場合が多いです。そのため、基本的には特に置き家具の場合は、家具・インテリア事業を付加する場合は自社で立ち上げるのではなく、信頼できるパートナー企業を開拓する方がお客様に高品質のサービスを提供できるし、工務店としての手間もありません。
信頼できるパートナー企業を開拓する際の評価軸は複数存在しますが、一番の考慮すべき条件は自社の住宅ブランドとマッチするような家具・インテリアブランドをその家具・インテリアショップが有しているかです。
その次にこれまでの家具ブランドとしてのブランド力、家具製作実績や取引条件といった要素が加わります。
造作家具についてはパートナー企業を開拓するよりも社内のノウハウを可視化した方が良いこともあるので、過去の造作家具の製作実績を社内から吸い上げて、どのような造作家具を製作できるのかサービス内容を明確にしてください。
住宅と家具をセットで提案できるようにオペレーションを改善する
住宅しか扱っていない工務店が家具・インテリアを取り扱えるようになれば、客単価アップが見込めますが、ただ家具・インテリアを扱えるようになるだけでは売上アップは見込めません。既存のマーケティングや営業のオペレーションの中に家具・インテリアの提案を組み込まないとユーザーは家具・インテリアを購入してくれません。
たとえば、家具・インテリアの取り扱いを始めましたというチラシを施主様に渡すだけではだめで、住宅展示場に実際販売している家具を置いたり、施主様との打ち合わせの際に使用する施工事例集に販売している家具・インテリア付きのコーディネート提案を掲載したりと、家具の相談会といったイベントを開催したりと普段の工務店としての営業活動の中に組み込むことによって家具・インテリアが販売できるようになります。
家具・インテリアを活用したマーケティング施策に取り組むのであれば、普段の注文住宅の営業・マーケティングにどのように家具・インテリアを取り入れるのかを考えたうえで、現場で営業しているメンバーにも家具・インテリアの販売ができるように研修・教育をする必要があります。全営業メンバーに家具・インテリアの提案ができるように教育するのは難しい場合は、インテリアコーディネーターのような家具・インテリアの提案をする専門スタッフを設置して、営業のどこかのタイミングでインテリアコーディネーターに商談に参加してもらうといった手法でも良いです。
家具・インテリアを活用したマーケティングで業績を向上させる
以上のように家具・インテリアを活用した工務店のマーケティング施策について紹介しました。今後、注文住宅の新規着工棟数の減少が予想されているので生き残るためには注文住宅を設計・販売する工務店から住空間をコンサルティング・プロデュースする工務店へのコンセプトの転換が求められます。
そして、住空間のコンサルティング・プロデュースに取り組む場合は、住宅だけではなく家具・インテリアも施主様の要望に合わせて提案できるような体制作りが求められます。また、こういった体制を構築することにより客単価アップやアフターマーケット開拓といったメリットを享受できます。
家具・インテリアを取り扱う場合、特に置き家具は内製化することが難しいので、パートナーシップを組める家具・インテリアショップを発掘する必要があります。提携する家具屋さんを探す際に一番重要なことは自社のブランドコンセプトに合致した家具屋さんと提携することで、住宅と家具・インテリアのコンセプトが一貫していることにより、ユーザーはそのコンセプトに共感・感動します。そしてこの共感・感動には価格競争回避や成約率・客単価アップといった効果が期待できます。