
近年あらゆる業界でバズワードになっているが「DX」です。建設・住宅業界においても大手企業を中心にDXに取り組む企業が徐々に増加しており、今後中小企業においてもDX対応が必要となることが予想されます。本コンテンツでは建設業界における「建設DX」とは何か工務店はこれらを参考にどのように取り組むべきか解説します。
- 建設DXの導入事例
- 中小工務店がDXに取り組む際のポイント
本コンテンツの学習にかかる目安時間は10分〜15分程度です。
本コンテンツの目次
DXとは何か?
DXの定義
DXとは「デジタル・トランスフォーメーション」を指す略語です。2018年に経済産業省が公開した「DX 推進ガイドライン」によると、DXとは 「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。」 と定義しています。もともとは2004年にスウェーデンのウメオ大学教授エリック・ストルターマン氏が「Information Technology and the Good Life」という論文の中で2004年に提唱した概念ですが、2019年頃からビジネス界でも注目を集めています。
IT化、デジタル化との違い
DXと混同されがちな概念がIT化やデジタル化といった概念です。
IT化やデジタル化といった概念はDXという概念が浸透する前から存在していましたが、単純にIT化やデジタル化を焼き直したのがDXというわけではありません。IT化やデジタル化は業務を効率化することを目的にしているのに対して、DXでは「競争上の優位を確立すること」を目的とします。そのため、DXがカバーする範囲はIT化、デジタル化よりも広範です。
なぜDXが注目を集めているのか?
建設業界に限らずさまざまな業界・業種でDXに注目、取り組む企業が増加しています。DXが注目を集めている背景には業務の生産性を高めなければ「企業間競争を勝ち抜くのが困難になっていること」、「IT技術の進歩によって労働者が行うさまざまな業務がコンピューターによって代替可能になったこと」の2種類の事情があります。
企業間競争が激化、生産性向上がカギに
さまざまな業界・業種において企業間競争が激化、各社が競争上の優位性を構築しなければなりません。しかしながら、単純な経費削減は商品・サービスのクオリティを低下、離職率アップや業務遂行リスクの増大につながります。そのため、商品・サービスのクオリティや事業の安定性を毀損しないように競争力を高めるためには生産性を向上させることがカギとなります。
生産性を向上させるためには守りのDXと攻めのDXが必要になります。
守りのDXはデジタライゼーションを発展させ、さまざまな業務を自動化、デジタルデータとして加工、保管することにより人間の労力が必要な業務を削減するためのDXを指します。
攻めのDXはシステムにより顧客の購買行動を分析しマーケティング戦略を立案したり、自動的にシステムが顧客フォローをしたりすることによって売上や収益を伸ばすためのDXを指します。
攻めと守りの両輪により生産性を高め競争上の優位性を獲得しようとするのがDXのコンセプトです。
コンピューターがカバーできる業務領域が拡大
DXに期待される役割は多岐に渡りますが、このような役割が期待されるほどIT技術がカバーできる業務領域は拡大しつつあります。
IoT技術を活用すれば機械が自動的にデータを分析・サーバーに送信してくれますし、送信されたデータを人間がいちいち解釈しなくてもAI技術によって自動的にデータ分析、施策を実行できます。特に近年はディープラーニング技術の開発やスマートデバイス・高速通信の発達によって人間にしか行えない作業は徐々に減少しており、むしろコンピューターにしかできない業務が増加しています。今後もIT技術の発展と共にDXによって実現できる業務領域は拡大していくと考えられます。
DXが建設業界に与える影響
DXという概念はありとあらゆる業界・業種に影響を与えています。特にアパレルや小売りといったビジネスのライフサイクルが早い業界で注目を集めているのはもちろん、徐々に建設業界においてもDX推進が行われています。
建設業界が抱える問題
建設業は人手不足や技術継承、高齢化などの問題を抱えており、特にDXの推進が求められる業界です。
2019年に国土交通省が発表した「建設産業の現状とこれまでの取組」という資料によると建設技能労働者のうち25.2%は60歳以上なのに対して20代以下の就業者は11.1%となっており、高齢化が進んでいます。さらに全産業平均と比較しても年間約300時間以上の余分な労働時間を費やしており、他産業では当たり前になっている週休2日も実現できていない企業が多いと言われています。
このような状況はさらなる若手の不足、ひいては技術や事業の承継が進まないことを意味しており、現在のビジネスモデルを維持することが困難になることを示しています。
建設DXによって解決が期待できること
建設業が抱える人手不足や技術継承、高齢化などの問題は建設DXによって解決可能だと考えられます。建設DXとは建設業界におけるDXのことを指し、さまざまな企業や団体が建設DXによる生産性向上に取り組んでいます。具体的には建設DXによって次のような問題が解決することが期待されます。
業務効率化による一人がカバーできる業務量を増やす
オードソックスな業務効率化の手法としては業務管理システムの導入が挙げられます。
SFA(営業管理システム)、CRM(顧客管理システム)といったシステムを導入することによって会社として顧客や営業状況を管理でき、ホウレンソウが効率化されて業務効率化、人手不足の解消効果が期待できます。
また、BIM/CIMという計画、調査、設計段階から 3D モデルを導入して、施工、維持管理においても3Dモデルを連携、プロジェクト全体で関係者の情報共有を容易に、管理を効率化・高度化する仕組みを導入する建設会社も増えています。
ちなみに国土交通省は2023年までに一部の工事を除いて原則すべての公共工事にBIM/CIMを適用する旨を決定しており、中小のゼネコンであってもBIM/CIMへの対応は必須だと考えられます。
効率的に次世代にノウハウを継承する
効率的に次世代にノウハウを継承するためにも建設DXは必要です。
国土交通省が発表した資料にもあるとおり建設業の従事者のうち約4分の1は60歳以上で今後この層の熟練工の技術をどのように次世代に継承するのかが業界全体の重要な課題となります。
たとえば、先ほど紹介したBIM/CIMを活用すると、熟練技術者の仕事の過程を分析あとから仕事内容を振り返るのが容易になりますし、顧客の引継ぎに関してもCRMを導入していればスムーズに実施できます。また、AI技術を活用して熟練技能者の仕事をラーニング、再現できるようにすることにより、熟練工の仕事を次世代に継承できます。
省人化を推進して危険な作業を回避する
建設業といえば、いわゆる3K(きつい、汚い、危険)と思われがちな職場ですが技術の進歩によってこのようなイメージも刷新されつつあります。
国土交通省は「i-Construction」と呼ばれる建設現場にICTを導入する取り組みを推進しています。
取り組みの中にはICT機器や高速通信技術を活用した無人施工技術の研究開発も含まれており、今後建設現場で人間が働くのではなく、人間が現場で動く機械を遠隔で操作する未来がやってくるかもしれません。
建設作業が機械化されることによって徐々に人間が働く環境も3Kから脱却、先進的な職場環境が整うことが予想されます。
建設DXの導入事例
建設DXは未来の概念ではなく、すでにさまざな建設現場で活用されていたり、実証実験が行われていたりするテーマです。建設DXの導入事例について紹介します。
鹿島建設
鹿島建設ではA4CSEL(クワッドアクセル)という技術を開発しています。
A4CSELは従来の無人化施工などとは異なり、作業データを送ると自動化建設機械が自律・自動運転で作業を行う技術のことを指します。無人化施工の場合は、遠隔で建設機械を操作しなければならないので一人で複数の機械を運転するのは困難ですが、A4CSELであれば原理的には一人で複数の機械を動かすことも可能なので、より効率的に建設作業が行えます。
鹿島建設ではA4CSELの他にもコンクリート注文・製造・管理の自動化システムの開発、自動スライド型枠、ケーブルクレーン自動化運転システム、ドローンによるレーザ測量といった各種技術を開発しています。
ARAV
ARAVは2020年創業の建設現場のDX・自動化を目指す東大発のスタートアップです。
ICT建設機械は遠隔操作可能で危険な場所に作業員を派遣する必要はなくなる一方で、高価なため中小建設会社への導入は困難でした。これに着目してARAVでは既存の建機に後付けで設置できる遠隔操作のためのシステムを開発しています。
2021年6月にはパソコンやスマートフォンから遠隔操作で建設機械を操作できる「Model V」をリリース、10~20年以上前に発売された古いタイプの建機でも改造せずに後付けで遠隔操作可能にできます。
安田工務店
安田工務店は1962年滋賀県長浜市に密着した工務店ですが、社内の情報共有、工程管理をスムーズにするためにANDPADという施工管理アプリを導入しました。
同社はもともと図面や資料を一綴りにして現場監督や職人に配布、週に1回の工程会議を行い手書きで工程表を更新といった作業を行っていました。しかし、このようなオペレーションだと図面が紛失、最新図面がどれか判別できなくなる、工程の変更が現場の職人まで浸透せずに足場解体後に高所作業が残ってしまうといったトラブルが発生していました。ANDPAD導入後は資料や工程、資材の搬入状況がタブレット上でチェックできるようになったのでこのようなトラブルは減少したとのことです。
サンコーコンサルタント
サンコーコンサルタントは江東区の総合建設コンサルタント会社で、国土交通省のCIM構想に先だって10年以上前から3Dデータ活用に取り組んでいます。
国土交通省がCIM構想を打ち出したタイミングで全社的に本格的に3次元モデルを活用する方針に、国土交通省北海道開発局からの受注案件からCIMを実践し始めました。現在では3次元設計を標準化しているのはもちろん、VR/ARなどを活用して住民説明会や施主様へのプレゼンテーションに活用しています。
竹中工務店
ヘッドマウントディスプレイを活用した施工管理
竹中工務店ではマイクロソフトのヘッドマウントディスプレイHoloLensを活用したMR(複合現実:Mixed Reality)施工管理に挑戦しようとしています。
3Dモデル化した構造物を現実の空間と重ね合わせることにより、完成形を確認しながら作業できる、関係者間でイメージを共有しスムーズな合意形成ができることから施工現場に活用しようとさまざまなゼネコンがMRの導入を検討しています。
竹中工務店はIT企業のハニカムラボと共同してHoloLensで建設現場の施工をアシストするためのアプリを開発、施工パーツ情報や取付位置などを現実の空間に投影し、それに基づく作業を行うことにより確認作業を短縮、作業の効率化が可能となりました。
構造設計AIによる設計業務の効率化
同じく竹中工務店では2023年に構造設計AIを自社で開発・導入しています。同AIは社内に蓄積された構造設計結果データを学習したAI建物リサーチ・AI断面推定・AI部材設計の3つによって構成されています。
もともと同社では2001年に自社開発したBRAINNX(ブレインエヌエックス)というシステムが稼働しています。このシステムで設計された500件以上の建物、30万以上の構造部材の諸情報をAIに学習させ、BRAINNXの機能の一つとしてAIによる構造設計機能を搭載しました。このシステムにより構造設計における計算に使う時間を大幅削減、お客様への提案を迅速に、新たな付加価値提案に費やす時間を増やすことを狙っています。
SORABITO
建設・建機レンタル業向けに様々なシステムを開発しているベンチャー企業です。建設機械の始業前点検のほか、設備や足場の点検、作業員の健康チェックなどあらゆる点検表をペーパーレスにする「GENBAx点検」というシステムを開発し、ゼネコンを中心にさまざまな企業に導入されています。点検表をペーパーレスにすることにより、安全点検業務の効率化、点検表の紛失防止といった効果が期待できます。
大成建設
建設業においては若手社員の採用だけではなく、離職防止も重要なテーマとなっています。そういった状況において離職防止ツールを活用して実際に若手の離職率防止の成果を出したのが大成建設です。大成建設では「HR OnBoard」と呼ばれるエン・ジャパン社が開発した定着・活躍支援ツールを事務系職員約120名を対象に導入、対象者に関しては離職率ゼロ、20代若手社員の離職率も8%から3.5%に低下させるといった成果を上げています。同システムでは社員のコンディションを簡単な3つの質問から推測、その答えから離職の兆候を早期に発見し、対策をスピードを高めることにより成果につながったとのことです。
シャープ・古野電気
さらに近年では人工衛星を活用した建設DXのソリューションの開発も進んでいます。大手電機メーカーのシャープは自社のLEO衛星通信アンテナと古野電機の建設現場向けWi-Fiシステムを連携させ、建設DX向け衛星通信ソリューションを共同開発することを2024年12月に発表しました。こういったソリューションがリリースされれば、地下や高層階、トンネル内などモバイルデータ通信が困難な建設現場における高品質で高速大容量のネットワーク環境が構築でき、さらに建設現場でITシステムを活用しやすい環境が構築できます。
中小建設会社・住宅会社こそDXに取り組まなければならない理由
建設DXに取り組んでいる建設会社として鹿島建設や日本設計といった大手ゼネコン、設計事務所の事例が挙げられることが多いので、大企業中心にムーブメントだと思われるかもしれませんが、実は建設DXは中小建設会社・工務店こそ取り組まなければならない施策です。
中小工務店において生産性向上は必須の課題に
大企業ほど規模のメリットが働きやすく、同じビジネスモデルであっても規模の大きい企業の方が効率的に経営できる可能性が高いです。そのため単純に経費を使用していると中小工務店、建設会社は競争に負けてしまいます。中小工務店ほど一人あたりの生産性を向上させることに注力すべきです。
生産性を向上させるためにはIT技術を活用して、一人がカバーできる業務範囲や件数を拡大、情報共有にまつわるコストを削減する必要があります。こういったレベルのことであれば業務システムやRPAの導入といったレベルの施策で実現できるので、中小企業でも過度な負担にならない程度のコストで実現できます。
良い職場環境を構築して事業を安定させるために必要
生産性を向上させることは競争上の優位性を確保するためにも必要ですが良い職場環境を構築するためにも必要です。
IT技術の発展によりさまざまな業務で省人化が進行する一方で、少子高齢化により労働人口は減少することが予想されます。
そして、中小企業の場合は大企業と比較すると属人的な仕事が多くなりがちなため人材育成と従業員の継続的に働ける職場環境の整備が必要になります。
そのためには会社全体でノウハウや顧客情報を共有する体制づくり、賃金や福利厚生の原資となる収益の確保、休みを取りやすいようなインフラ整備が必要となります。こういったことを実現するためにはDXの推進と生産性の向上が重要な課題となります。
売上を創出するためのシステム導入
ITシステム投資といえば、コストばかりが注目されがちですが導入することによって売上、収益アップが図れるシステムも存在します。
典型的なシステムとして挙げられるのがMAです。MAとはオートメーションツールの略称で、メールやWebサイトでのユーザーの動向を分析してシステムが自動的に顧客をフォローしてくれるシステムのことを指します。こういったシステムを活用することにより少ない広告費、営業人員で効率的に見込み案件を創出、ひいては売上、収益アップを実現できます。
中小工務店がDXに取り組む際のポイント
上記のような理由から中小企業であっても業務のDX化には取り組むべきです。ただし、いきなり自社専用のシステムを開発したり、高価な機械を導入したりするのはハードルが高く、実質的には不可能です。では、どのようなことから建設DXに取り組めば良いのか、ポイントを7つ紹介します。
まずは情報の整理から行う
前提としてニュースに出てくるような先進的な建設DXの事例をマネするのではなく、中小工務店の場合は情報を整理することから始めるべきです。情報を整理することにより業務のムリ・ムダ・ムラを削減できます。
たとえば、施工の外注先や資材の購買先をきちんと整理して、分析することにより無駄なコストを減らせるかもしれません。また、顧客名簿と営業データを突き合せれば、アプローチするべき顧客が見つかったり、営業の勝ちパターンといったことが発見できたりするかもしれません。
また、単純に要らない書類を捨てたり、デジタルデータ化するだけでも事務所を広く使えるようになって事務所の快適性が向上したり、書類を探す手間を省けるようになるといったこと効果が期待できます。
DXとIT化の違いについて深く考えない
DX化とは「競争上の優位を確立すること」を目的としてIT投資をすることだと冒頭で説明しましたが、実際問題として競争上の優位をどうITを使って獲得しようと考え出すと意外と難しかったりします。
そのため、DXとIT化の違いについては厳密に考えず、ITを使って工務店を良くしたい、快適に働ける環境を作りたいといった程度の目的で実施した方が結果として工務店の業績もよくなります。
たとえば、不要な紙の資料をPDF化して、原本を廃棄するといったことは一見すると競争上の優位につながらないかもしれませんが、従業員が効率的・快適に過ごせる職場環境を作ることにより時間当たりの生産性向上といった効果が発生すると期待できます。このようにDXとITの違いを気にせずに職場環境を良くする、お客様に喜んでもらうといった動機からIT投資をする方が近道です。
社長の強いコミットメントが必要
ITシステムはとりあえず導入すれば効果を発揮するといったものではありません。現場への定着が必要です。
たとえば、営業チームで顧客情報や顧客への対応履歴はすべて顧客管理システムで管理することに決めたケースを考えます。このときに誰か一人でも顧客管理システムに情報を入力しない人がいれば、そのメンバーの顧客への対応履歴が分からないので別途ヒアリングしたり日報をチェックしたりが必要になります。また、システムに営業の予実管理機能が搭載されていても入力していないメンバーの情報が抜けているので正しい予測はできなくなります。
このように社内のDX化を推進する場合、関係者のなかで特定の人が使っていないことによりシステム導入の効果を得られなかったり、かえって手間が増えたりするといった場合も考えられます。
こういった事態を防ぐためには、社長の「このシステムを社内に浸透させる」という強いコミットメントが必要なります。とくにIT化が進んでいない工務店の場合は現場に任せるのではなく、社長が定着のためのPDCAを回し、必要に応じて人事評価や現場のオペレーションにも手をいれなければなりません。
専用のシステムは開発しない
DX化を推進する際には、自社専用のシステムを開発するのではなく、既存のシステムを組み合わせて使う方が良いです。自社専用のシステムを使えば、その時点の自社の業務に合致することができるかもしれませんが、社内体制や業界の変化によってシステムをメンテナンス・必要に応じて改修作業が発生します。そして、こういったコストは意外と重く、システムが収益を圧迫することも考えられます。
こういったリスクをヘッジするためには、既存のシステムを上手に活用する姿勢が求められます。とくに近年のクラウド型システムは機能が豊富で月額で支払い無駄なコストを支払わなくてよいだけではなく、時代に合わせてシステムが自動でアップデートされるので、合理的に使用可能です。
使いやすい・安いシステムを少し触ってみる
中小工務店の場合、専用のシステムはあえて作らない方が良いというのは説明したとおりですが、既存のシステムを購入・契約する際も使いやすい・安いシステムを少し触ったうえで導入するといったスタンスの方が良いです。
とくに「使いやすい」というのは重要な要素で、高機能なシステムほどインターフェースが複雑になるので現場の従業員が使いこなすのが困難になります。また、従業員のITリテラシーを高めたり、フォローしたりする人材を用意するのにはコストがかかります。よって、中小工務店の場合は、従業員が現場で直感的に使いやすいというのが重要なシステムの要素です。
そのため、必要最低限の機能を決定したうえで、その機能が一番使いやすい、コスパの良いシステムを探すのが基本的なシステム選定のポイントです。
経理・勤怠関連システムは導入しやすい
まだ、ほとんどDX化を進めていない工務店の場合、経理・勤怠関連のシステムから導入するのがおすすめです。経理関連システムは経理関係者にだけ浸透すれば良く、バックオフィス周りのDX化において重要な要素になること、勤怠関連は仕組みがシンプルなので、従業員に浸透しやすく便利さをすぐに実感できるからです。
多くの中小企業が会計システムを導入していますが、e-GOVやGビズを導入して申請業務を行ったり、請求書発行・債権管理業務にシステムを導入したりとさらにデジタル化を推進することにより経理周りの業務はDX化によって大幅に効率化されます。
また、勤怠関連のシステムも導入しやすいシステムの一つです。出退勤や有給管理といった機能はシンプルなので、ITリテラシーが低い従業員であっても使いこなせます。それでいて、これらの勤怠管理業務がDX化すると給与自動計算、有給日数をはじめとする各種要素の管理を効率的に行えるようになるのでバックオフィス側の業務が一気に減ります。
逆にフロントオフィス側で使用するCRMやSFAといったシステムは今まで顧客や営業情報を記録する文化のなかった従業員にとっては面倒だと感じられやすいので、根気よく定着を目指す必要があります。
補助金を上手に活用する
DX化するための予算を確保するのが難しい工務店も多いかもしれません。そういった場合は補助金を上手に活用することにより、コストを抑えてのシステム導入が可能です。
DXの代表的な補助金としてあげられるのが、IT導入補助金です。詳細は各年度によって異なりますが、ITシステムを新規で導入する際にかかる費用の一部が補助金として支給されます。買い切りのシステムだけではなくクラウド型システムの利用料も補助の対象になるので使いやすい補助金です。
その他にも事業再構築補助金、ものづくり補助金などITシステム導入に使える補助金はあります。加えて都道府県や市町村が独自の補助金を出している場合もあるのでこういった仕組みを活用することにより、初期費用を抑えてのDX化が実現できます。
建設DXでビジネスモデルを変革する
DXがさまざまな業界で注目を集めていますが、生産性の向上が強く求められている建設・住宅業界にこそDXが必要になります。
特に建設・住宅業界の場合はスーパーゼネコンといった大手企業が建設DXを推進していますが、中小の工務店・建設会社ほど建設DXに挑戦して生産性を高めることが強く求められます。
スーパーゼネコンが挑戦している高度な取り組みは必要ありませんが、Webサイト制作やインターネットを軸としたお客様とのコミュニケーション手段の確保はもちろん、CRM、SFAといった業務システムの導入は検討するべきです。
建設DXに関する展示会も開催されています。2021年から建設DX展という展示会が東京・大阪で開催され、毎回多くの来場者を集めています。こういった展示会場には業務管理システムのような古典的なシステム会社から生成AIなどを活用した新規のサービスまでさまざまな建設DX周りの企業が出展しています。
まだ建設DXに関してピンとこないといった場合は、まずはこういった展示会に参加して情報収集からはじめるのも良いです。