リードナーチャリングとは日本語に直すと「見込み顧客育成」のことを指します。
一昔前は見込み顧客の育成と言えば営業担当者が行っていましたが、現代の営業においてはマーケティング担当者が実施することが多くなっています。
工務店においても同様で、業績を上げられる工務店はいかにリードナーチャリングを効率的に実施するか工夫しています。
本コンテンツでは工務店がどのようにリードナーチャリングを実施すべきか説明します。
- リードナーチャリングを行うメリット
- 工務店がリードナーチャリングを行う手法
- 工務店がリードナーチャリングを行う際のポイント
本コンテンツの学習にかかる目安時間は10分〜15分程度です。
本コンテンツの目次
リードナーチャリングとは何か
リードナーチャリングとはLead Nurturing、すなわち見込み顧客(Lead)を育成(Nurturing)する活動のことを指します。
たとえばWebサイトや工務店のマッチングサイトで資料請求したばかりで自工務店に興味がない顧客のことを「コールドリード」と呼びます。
このコールドリードに色々な情報提供やサポートをして、自工務店でぜひ住宅を建てたいと思う確度の高い見込み顧客すなわち「ホットリード」にするために行うのがリードナーチャリングです。
もちろん昔から似たような概念は存在しましたが、営業活動が科学的に研究され、プロセス管理の手法が導入されることによって、とくにこの過程のことを「リードナーチャリング」と呼ぶようになりました。
3つのリード●●
ちなみに営業活動を分解することにより、現代の営業では他にも「リード●●」という名前の営業活動があと2つ存在します。
参考までに残り2つの営業活動「リードジェネレーション」「リードクオリフィケーション」についても紹介します。
リードジェネレーション
リードジェネレーションとはLead Generationすなわち見込み顧客(Lead)を育成(Generation)する活動のことを指します。
工務店の営業活動においては家作り相談会で相談者を集めたり、Webサイトからの資料請求でメールアドレスを獲得したり、住宅展示場の来訪者にアンケートをもらって個人情報を収集したりといった営業活動がリードジェネレーションにあたります。
リードクオリフィケーション
リードクオリフィケーションとはLead Qualificationすなわち見込み顧客(Lead)として適格な顧客を選出(Qualification)する活動のことを指します。
一定の条件を設定して、その条件に該当する顧客をホットリードとして認定して営業担当に引き渡すことをリードクオリフィケーションと呼びます。
何を持ってホットリードとするかは工務店によっても異なりますが、たとえば家づくりのメルマガ経由で特定の資料を請求した顧客をホットリードとしたり、WebサイトやSNSを何回以上閲覧した以上顧客をホットリードとして営業担当に引き渡したりすることが例として挙げられます。
MAツールの活用とナーチャリング
リードナーチャリングと切っても切り離せないのがMAツールと呼ばれるシステムです。
MAツールとは「マーケティングオートメーションツール」のことを指します。
MAツールを使用すれば見込み顧客に対してメールやWebサイトを使用して継続的にコミュニケーションを実施、それに対する顧客の反応を点数化して顧客の購買意欲や関心度を定量的に分析、管理できるようになります。
ナーチャリングと一口に言っても、アナログな管理では手間もかかるし、ネット上の行動は追跡できないのでMAツールを導入してナーチャリングを実施している工務店も存在します。
工務店がリードナーチャリングを行うメリット
リードナーチャリングは工務店の住宅営業においても必須級の活動になっています。
次の3つのメリットからナーチャリングができる工務店とできない工務店には大きな差が発生します。
現代の住宅の購買プロセスに対応できる
リードナーチャリングの精度を高めることは現代の住宅の購買プロセスに対応するために必須です。
インターネットの発達によって顧客は自由に情報収集できるようになりました。
家作りについても同様で、昔であれば地場の工務店に相談して家づくりの検討を始めていた顧客が、現代においてはインターネットで独自に情報収集して家作りに関して必要最低限の知識は習得して、家づくりを依頼する工務店も目星をつけたうえで相談に来ます。
そのため、営業活動のリードジェネレーション、ナーチャリング部分を強化しないと、現代では問い合わせ自体がほとんど発生しないといった仕組みになっています。
このような購買プロセスに対応するためにもいわゆるコールドリード状態の顧客にいち早くアプローチして育成して自社のホットリードに成長させる仕組みづくりが必要です。
見込み確度の高い顧客に営業がアプローチできる
工務店・住宅業界は人手不足が著しい業界の1つです。そのため、工務店の営業担当は効率的にたくさんの顧客にアプローチする必要があります。
効率的に営業するとは端的にいえば見込み確度の高い顧客を中心にアプローチすることを指します。
従来であれば営業担当が一組ずつの顧客に対応していたリードナーチャリング作業も、現代では効率的に見込み度を上げることが求められます。
すなわち、マーケティング担当者がナーチャリングを行い、そこで育ったホットリードを営業担当者が成約まで誘導するという役割分担が工務店にも求められています。
効率的に見込み度をあげるためには営業が接するだけではなく後述するようなメール配信、セミナーなどを組み合わせたリードナーチャリングが必要です。
注文獲得コストを削減できる
住宅注文の獲得コスト削減効果も期待できます。
リードナーチャリングには多くの労力を必要とします。特に営業担当が人力で個別に顧客にアプローチ、情報提供をしようとすれば時間がかかるので人件費を加味すればナーチャリング費用は膨大になります。
一方でメール配信、セミナー・イベント営業といった一度に大量の顧客をフォローできるナーチャリング手法を使えばコストパフォーマンス高く顧客のロイヤリティを向上できます。
人件費を加味した住宅の注文までの獲得コストを考慮するならば、システマティックにリードナーチャリングを実施した方がコストは削減できます。
リードナーチャリングの方法
MAを使って顧客ごとの商品・サービスに関する購買意欲・関心度をスコアリングして管理した方が良いことを説明したとおりです。
そして、顧客のスコアをあげる(=ナーチャリングする)のにはさまざまな方法があります。ナーチャリングの代表的な5つの手法を紹介します。
家作りメディア・ホワイトペーパー
家作りメディアやホワイトペーパーを活用して、家づくりに関する知識を提供して、家作りの検討を進めさせ、自工務店の専門性をアピールする方法があります。こういった手法でナーチャリングすることをコンテンツマーケティングと呼ぶこともあります。
ちなみにホワイトペーパーとは「家づくりを開始する人が知っておきたい10の豆知識」「北欧テイスト住宅成功事例集ベスト30」のように読者の興味を惹きそうな小冊子のことを指します。
家作りメディア・ホワイトペーパーは短期で成果を出すのは困難ですが、リードジェネレーション、ナーチャリングの両方に活用できて、コンテンツさえ充実させれば広告費もほとんど発生しないので中長期的に取り組むべきだといわれています。
メール配信
メール配信も王道のナーチャリング手法の1つです。
とくに近年はただメール配信を行うのではなく、開封率を調査、ユーザーがどのコンテンツURLをクリックしたか、その後Webサイト上でどのような行動をしたかを分析して、顧客の興味・関心を推測するマーケティング手法を一部の先進的な工務店は実施しています。
メールを配信し、MAツールでその反応を分析したり、その反応をもとに自動的にMAシステム側でまたメールを送信したりと、技術の発展によってどんどん自動化が進んでいるナーチャリング手法です。
SNS
SNSを活用したナーチャリングも重要です。
工務店においてはInstagramによる情報発信の重要性は年々高まっていますし、成果もあがっています。
SNSを活用したナーチャリングのメリットは、普段使いしているSNSを通じて自然と工務店のことをアピールできる、コメント、リプライなどの機能を駆使して顧客と双方向でコミュニケーションを取れることにあります。
また、純粋な情報発信で新規顧客のナーチャリングを行うだけではなく、OB顧客とのSNS上での交流による関係維持やユーザー参加型キャンペーン、プロモーションの開催など工夫次第でナーチャリング手法の幅を広げられます。
参考:工務店のSNS活用術
リターゲティング広告
リターゲティング広告とは自社のWebサイトに一度来訪したユーザーに対して再度来訪してもらうために表示する広告のことを指します。
すでに一度サイトを訪問しているユーザーに広告を表示する手法なので、資料請求やメルマガ登録などのコンバージョンが得られやすい傾向があります。
また、人間は繰り返し接触しているモノに対して印象が強くなり、好感度が高まりやすいという「単純接触効果」によるロイヤリティアップも期待できます。
とくに住宅のように検討期間が長い商材においては、検討期間中に自工務店のことを思い出してもらう、良い印象をもってもらうために有効なナーチャリング手法です。
家作りセミナー・イベント
とくに住宅の場合は、いきなり依頼する工務店や住宅の仕様を決めるのではなく、その前に家作りに関する知識を取得したい、勉強をしたいといったニーズが強い商材です。
そのため、家作りに関するセミナー・イベントは工務店のナーチャリングにおいては有効なコンテンツです。
一口に家作りセミナー・イベントといってもさまざまなパターンが考えられるので詳しくは下記の記事を参考にしてください。
参考:工務店の集客イベント10選~具体例とマーケティング手法について~
リードナーチャリングのポイント
ここまでリードナーチャリングのメリットや手法について説明してきましたが、リードナーチャリングはあくまでも営業プロセスの一種です。
そのため営業活動全体のバランスが悪かったり、ナーチャリング手法が稚拙だったりすると失敗に終わる可能性があります。リードナーチャリングを成功させるためには次の3つのポイントに注意してください。
営業部門とマーケティング部門が円滑に連携する
リードナーチャリングはホットリードを育成して営業に引き渡すためのステップです。
そのためナーチャリングを実施するマーケティング部門と後工程として営業をする営業部門の連携がスムーズであることが成功の秘訣になります。
とくに重要なのがホットリードの条件を擦り合わせること、顧客対応の引継ぎをきちんと行うことです。
ホットリードの条件をすり合わせることについて、営業とマーケティングでホットリード像が異なれば、営業は確度の低い顧客として優先順位を下げますし、営業から過度な期待をされてもマーケティング部門側で創出できるホットリードの条件には限界も多いです。
こうした「ホットリード」に求める条件をお互いにすり合わせて、協力しながら営業活動を実施すべきです。
また、顧客対応の引継ぎについて、マーケティング担当からのホットリードの引き渡しが雑だと営業担当はアプローチがしにくくなりますし、営業からホットリードがその後どうなったかフィードバックが得られないとマーケティング部門は今後のマーケティング活動に活かせません。
システムにより見込み顧客の状態を管理する
見込み顧客の状態をシステムによって一元管理することも重要です。
MAツールを活用して定量的に顧客の購買意欲、関心度を測定できる体制を構築することが理想ですが、最低限顧客とのコミュニケーション履歴は記録しておくべきです。
そのためにエクセルによる顧客情報の管理ではなく、CRMという顧客情報管理専門のシステムを導入すべきです。
またシステムを導入するだけではなく、システム上にきちんと顧客情報と対応履歴を徹底的に入力するように組織をあげて取り組まなければなりません。
住宅に関するコンテンツを作り込む
家作りメディア、メール配信、家作りセミナー・イベントなどナーチャリングのさまざまな手法について紹介しましたが、いずれのナーチャリング手法にも共通しているのが、コンテンツ作りが必要なことです。
住宅営業は住宅という目に見える商品を最終的には提供しますが、住宅の注文をもらう段階では完成物は存在しません。そのため、住宅やライフスタイルに関する知識を提供し、イメージを伝えるのが住宅営業の重要な仕事です。
そのため顧客のロイヤリティを高めるためのコンテンツ作りは重要で、ナーチャリングのためのコンテンツの精度が高く、量も豊富だとホットリード化する確率が高くなります。
リードナーチャリングで効率的な住宅営業を
効率的な営業活動を行うためにも、工務店におけるリードナーチャリングは重要です。
とくに近年は工務店に家づくりの相談をする前に顧客がすでに色々な行動を起こしている傾向があるので、検討初期段階の顧客をいかに発見して、家づくりの知識を提供して自工務店へのロイヤリティを高めてもらうかが重要になっています。
リードナーチャリングにはメール配信、SNS、セミナーなどさまざまな手法がありますが、会社として営業プロセス改善、ナーチャリング強化に取り組まないとなかなか成功しません。
すでに先進的な工務店はナーチャリングの重要性を理解し、さまざまな手法に挑戦しているので、業績をあげたい工務店のみなさまはぜひ挑戦してください。