新築住宅の新規着工棟数は減少が予想される中、単純な住宅づくりの提案では他社と差別化できず価格競争に巻き込まれる傾向がますます高まっています。
そのような時代において注目すべきなのは、住宅そのものだけではなくインテリアや空間づくりを含めたトータルコーディネーターとしての工務店です。
本コンテンツでは注文住宅におけるトータルコーディネート提案について解説します。
- トータルコーディネート提案を行う意義
- トータルコーディネートを行う際のポイント
本コンテンツの学習にかかる目安時間は5分〜10分程度です。
本コンテンツの目次
なぜトータルコーディネート提案を行うのか
工務店が家を建てるだけではなく、インテリアを含めて空間をトータルコーディネートし提案する例が増えています。
トータルコーディネート提案を行う意義については以下の4点が挙げられます。
施主の期待に応える提案ができる
近年、工務店の空間コーディネート能力への期待が高まっています。現代社会ではSNS・インターネット上に大量の家づくりの事例、お部屋のコーディネート事例などが溢れており、家づくりを考えている施主様はこれらの画像・動画を見て家づくりに対する期待を膨らませます。
もちろんこういった家が欲しい人が見ている事例は家そのものが素晴らしいだけではなく、そこに置かれているインテリアを含めて空間として魅力的に見える事例ばかりです。そのため、工務店側も家という箱の設計をするだけではなく、住宅の中の空間作りまでサポートすることで施主の求める提案を行えるようになります。
SNSマーケティングの効果を高める
SNSマーケティングにおいて問い合わせを獲得するためにも、トータルコーディネートの考え方は非常に重要です。たとえばInstagramの写真を見て問い合わせをするユーザーはその家そのものではなく、その住宅の雰囲気やデザインに魅力を感じて問い合わせをするはずです。
もちろん、住宅そのものもこのような雰囲気やデザインを構成している要素ですが、画像内に映っているインテリア・小物・人物などもユーザーを惹きつける重要な要素です。そのため、いくら良い住宅を作ってもインテリア・小物使いが下手だとSNS経由の集客に苦戦する傾向があります。SNS集客を効果的に行うためには、全体の雰囲気を含めてコーディネートが必要です。
また、イベント集客を活用して見込み顧客を集めている工務店も数多く存在しますが、こういった工務店が「インテリア」というアプローチ手法を既存の手法に加えることにより、今までアプローチできなかった客層にリーチできたり、商談の成約率が高まったりといった効果が期待できます。
ブランド価値を向上させることができる
どの業界でも「モノ売りからコト売りへ」という標語が叫ばれていますが、住宅(工務店)業界も例外ではなく、この標語が当てはまっています。つまり家(モノ)づくりではなく空間(コト)作りに営業の重点が変化しているということです。
例えば、大手小売店の無印良品は、工務店事業として「無印良品の家」というブランドで住宅サービスを提供しています。無印良品を運営している良品計画社には空間設計部というチームがいて、無印良品のコンセプトをもとにした空間づくりをしています。無印良品の家に住む方はもちろん無印良品のコンセプトが好きな人なので、住宅内で使用するインテリアも無印良品で揃える傾向が高くなります。
このように住宅というモノを売るのではなく、エシカルなコンセプトが好きな消費者にそれを実現した空間(コト)を提供することによって工務店独自のブランド価値を付加することができます。
客単価アップが見込める
インテリアを含めたトータルコーディネートを提案することで、注文住宅の建設だけではなく、追加で家具の販売ができるため、客単価の増加を見込むことができます。また単純に家具代が上乗せになるというだけではなく、空間(コト)売りをすることでブランド価値を高め、家そのものについても、より高単価で販売を見込むことができます。
このようにインテリアを含めたトータルコーディネートを行い、お客様に提案を行うことはこれからの工務店にとって必要なことです。
トータルコーディネート提案を成功させるための3つのポイント
このようにインテリアを含めたトータルコーディネート提案は工務店経営の観点からも意義がありますが、空間のトータルコーディネート営業を成功させるためには、次の3点に気を付ける必要があります。それぞれのポイントについて説明します。
住宅ブランド・自工務店のコンセプトを明確にする
ただ「住宅もインテリアも取り扱っています」というだけでは競争力はありません。提供する住宅とインテリアがちぐはぐ、まとまりがない印象だと消費者は魅力を感じないからです。たとえば、住宅ブランドは木の家を訴求しているのに、提案している家具がメタルだと施主様はちぐはぐな印象を受けますし、おそらく空間として調和させるのも困難になります。よって住宅とインテリアのコンセプトを合わせるというのが鉄則になります。
そして、コンセプトを揃えるためには自社の住宅ブランドや工務店のコンセプトを明確にしなければなりません。コンセプトを明確にすることによって提携するべきインテリアショップや自社のクリエイティブの魅せ方が明確になります。
施工・コーディネート事例を蓄積する
トータルコーディネートを提案するためにインテリアコーディネーターを採用することも大切ですが、インテリアコーディネーターに提案内容を任せていると、個人によって提案の質に差が出たり、必ずしも工務店のコンセプトに従った提案が貫徹できなかったりする可能性もあります。
こういった事態を防ぎ、工務店として均一なコーディネート提案をするためには、施行・コーディネート事例の蓄積が必要です。事例を蓄積することにより、コーディネーター個人の能力・好みによる提案のぶれを防ぎ、均質な提案が可能となります。
ちなみに、トータルコーディネート事例は存在しないと思っていても意外と長年工務店をやっている会社なら少なからず存在するケースもあります。たとえば、家具は提案していないと認識していても、意外と長年工務店をやっていると造作家具の製作事例などが現場に転がっているかもしれません。こうした事例を収集して、自社がどのような提案をできるかを整理することからはじめるのも良い方法です。
工務店とパートナーシップを組める家具・インテリア業者を開拓する
3つ目にあげられるのが工務店とパートナーシップを組める家具・インテリア業者を探すことです。ちなみに、この項目がトータルコーディネートにおいて最も重要だったりします。
パートナーシップを組むべき家具・インテリアショップは、ただ家具やインテリアを卸売りしてくれるだけではなく、工務店のビジネスを理解していることや、その住宅に合った家具を提供してくれることなど柔軟性が求められます。
住宅のコンセプトと家具のコンセプトが一致していないとユーザーに魅力が伝わらないので、この微調整に付き合ってくれる家具・インテリアショップ探しがとても重要です。
ちなみにこのときに提携する家具のブランドも重要です。安い印象を受ける家具ブランドと提携すると、自工務店の住宅ブランドまで安く見積もられる可能性があります。価格でメリットを出せるように安く家具を提供してくれるところを…と思われるかもしれませんが、少なくとも消費者にはチープなブランドだと思われないようにするべきです。
トータルコーディネートができる工務店に進化する
以上のようにインテリアから考える家づくり、トータルコーディネートによる効果について解説しました。
家づくり単体だと、大手ハウスメーカーから零細工務店まで同じような土俵に立って技術力・価格競争しなければなりませんが、コーディネート提案まで含めれば単純な価格競争に陥る可能性が低下します。
インテリアを含めたトータルコーディネートを社内だけで完成させようとすれば、膨大なリソースが必要なので、インテリアについては工務店の業務について理解ある家具・インテリア業者と提携するのが成功の近道です。
良い家具ブランドと提携することにより集客の幅が広がり、客単価アップ、価格競争回避といった効果が期待できます。