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工務店DXの成功のポイント

様々な業界でDXが注目を集めています。工務店においても顧客の住宅購買行動の変化に合わせたり、人手不足を解消したりする目的で様々な企業がDX化に取り組んでいます。

本コンテンツでは工務店を対象にDXについて解説し、具体的にどのように工務店の業務に適応できるかについて紹介します。

本コンテンツで学習できること
  1. 工務店におけるDXの定義と、IT化との違い
  2. 中小工務店が取り組むべき具体的なDX施策(Web集客・顧客管理など)
  3. DXを現場に定着させるための実践ポイントと注意点

本コンテンツの学習にかかる目安時間は5分〜10分程度です。


DXとは?

DXとはデジタルトランスフォーメーションのことを指します。DXという概念が誕生したのは2004年のことです。2004年以前もデジタル化、IT化のようなキーワードで業務にITを導入する企業は数多く存在しましたが、これらの概念とDXは微妙に異なります。まずDXとは何なのか?について詳しく説明します。

DXの定義

DXの概念は2004年にスウェーデンのウメオ大学エリック・ストルターマン教授によって提唱されました。トランスフォーメーションは英語で「変化、変容」などを意味しますが、その言葉のままデジタル化は人々の生活や社会を変容させるという意味でDXという概念が誕生したのです。

日本では経済産業省が2018年に「DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~」というレポートを公開、この中でDXという言葉が使われていたことにより注目を集めました。

ちなみに同レポートでは、DXについて、IT専門調査会社のIDC Japan 株式会社の定義を参考にして次のように定義しています。

企業が外部エコシステム(顧客、市場)の破壊的な変化に対応しつつ、内部エコシステム(組織、文化、従業員)の変革を牽引しながら、第3のプラットフォーム(クラウド、モビリティ、ビッグデータ/アナリティクス、ソーシャル技術)を利用して、新しい製品やサービス、新しいビジネス・モデルを通して、ネットとリアルの両面での顧客エクスペリエンスの変革を図ることで価値を創出し、競争上の優位性を確立すること

 

DXとIT化の違い

上記の定義をそのまま読めば難解に見えるかもしれませんが、DXとはビジネスとIT技術が深く結びついた状態のことを指します。

たとえば、顧客情報はシステムによって管理されており、その顧客情報に基づいてシステムが自動でお客様にメールを配信したり、あるいはオンライン面談が営業の基本になっていて、遠隔地のお客様とも対面以上にスムーズに商談ができる体制が整っている状態はビジネスに深くITが結びついている状態、すなわちDX化された状態です。

これはたとえば、とりあえずホームページは作っておきましょう、紙の書類をPDFにしておくと災害時に便利ですよといったレベルの使い方とは異なります。IT化とは業務にIT技術を導入すること全般のことを指しますが、その中でもよりビジネスの大事な部分にIT技術を導入することをDX化と呼びます。

工務店になぜDXが必要か?

工務店においてもDXが重要になってきました。主な理由は2つあってコロナ禍による施主様の購買行動の変化と工務店業界における人手不足・人件費高騰です。

コロナ禍による施主様の購買行動の変化

日本でDXという概念が提唱された2018年の直後、コロナ禍が発生しました。このコロナ禍は人々の行動に大きな変化を与えました。

感染を避けるために人々が外出しなくなり、リモートワークやフードデリバリーなどそれまであまり注目されていなかった様々な生活様式が注目を集めました。

住宅の購入に関しても同様で、注文住宅が欲しいと思ってもいきなり住宅展示場には行かずにインターネットで先に情報収集をじっくりするようになったり、家づくりの打ち合わせに来店する、訪問することが億劫になったりと施主様の意識は変化しています。

こういった購買行動に合わせて自社の住宅営業を最適化させるのが工務店がDXに取り組むべき理由の1つです。

工務店業界における人手不足・人件費高騰

工務店に限った話ではありませんが、日本中さまざまな産業で人材が不足し、人件費が高騰しています。そのため、そもそも人は雇えず売り上げを維持しつつ従来と同じ業務プロセスを保つのは困難ですし、人が雇えたとしても人件費が上がっているので労働生産性が一緒ならば利益を出すのは困難になります。

そのため、DXを推進することにより少人数で売上を創出できる、生産性の高い企業に変革することも求められています。

中小工務店におけるDXとは?

以上のように工務店においてもDXは必要で、実際に多くのビルダーは様々なDX化事業に投資をしています。ただし、こういった取り組みは大抵、DXに人材も予算も割ける大企業が推進していることであり、中小工務店が真似をするのは困難です。

そのため、中小工務店の場合は、①少額の予算から投資できる、②専門人材を雇う必要がない、③それでいて比較的成功率が高い、DX化から着手すべきです。具体的には、Web集客、顧客管理、オンライン商談、バーチャル展示場の4つについて検討してください。

ちなみに、大企業を含めて業界全体で進行しているDX化の事例については下記の記事から確認してください

参考:【2025年4月更新】建設DXの最新状況と取り入れ方

 

中小工務店が取り組むべき4つのDXテーマ

中小工務店が取り組むべき4つのDXテーマについて、それぞれ詳しく説明します。もちろん、この全部に同時並行で取り組む必要はなく、これをベースに各工務店ごとの優先順位で取り組んでください。

Web集客

工務店がDXに取り組む際にまず考えなければならないのは、Web集客です。特にコロナ禍以降、Web上で広く情報収集をして実際に工務店に相談しにいく頃にはすでにある程度検討が進んでいるといった傾向は顕著になりました。

そのため、Web集客は工務店のビジネスモデルのDX化において取り組まなければならない重点施策の1つです。ただし、一口にWeb集客といっても、ホームページ集客(Web広告、SEO)、SNS(Instagram、Facebookなど)、プラットフォーム(SUUMO、HOUZZなど)などさまざまな手法が存在します。こういった手法を総当たり的に取り組むのには手間も予算もかかるのでWeb集客の中でも自社が取り組みたい施策2つから3つに絞って取り組むべきです。

具体的なWeb集客の手法についてはこのコンテンツをチェックしてください。

参考:工務店集客に活用したいWebマーケティング

 

顧客管理

顧客管理も工務店のDX化において主要な施策の一つです。住宅という商材の性質上、お客様の検討期間は長く、一度住宅を建てたあともOB顧客として顧客との接点を保持し続けるのも一般的です。そして、こうした顧客データが工務店の将来の売上を支える大切な財産になったりします。

そのため、こういった顧客情報を有効活用するために、きちんとデジタルデータ化したうえで、適宜データを分析して、売上創出のためのアプローチをしなければなりません。

DX化の初期段階はとりあえず顧客データをExcelやスプレッドシートに取り込んで分析してみることから始めますが、本格的な顧客管理を実現するのであればCRMという顧客管理に特化したシステムの導入を検討すべきです。CRMとして代表的なツールには、Salesforceや、工務店の業務に特化したAnyOneなどがあります。

またCRMを使って顧客情報を管理することから一歩進んで、コミュニケーションを取るための方法について自社にとって何が最善かを考えてください。コミュニケーション手段としては電話や対面営業のような手法から、メールやLINEのような一斉に大量の顧客を相手する手法までさまざまな手法が存在します。顧客との連絡手段は特定の手段に集中した方が効率は良くなります。

オンライン商談

もちろん今でも工務店に来店頂いての商談は有効ですが、注文住宅の場合、商談の回数も多くなるので来店いただくことが施主様の過度な負担につながることもあります。こういった施主様の負担を軽くするためにオンライン商談の導入を検討してください。

簡単な所から始めるのであればZoomやGoogle Meetといったツールを活用してオンラインで施主様と打ち合わせできる環境づくりが第一歩となります。そこからさらに発展させるのであればオンライン打ち合わせ用に商談に、必要な営業ツールを作り込んだり、設備を整えて商談環境を整備したりといった取り組みが必要です。

バーチャル展示場

工務店業界でコロナ禍以降に注目を集めたDX施策としてはバーチャル展示場が挙げられます。コロナ禍により住宅展示場に気軽に行けなくなったため、下調べでバーチャル展示場に興味を持つ施主様が増えたからです。

コロナ禍が収束したことにより、住宅展示場の来場者も一定程度戻ったと考えられますが、オンラインで住宅展示場を見たいといったニーズは残っています。また、集客がオフラインからオンラインに移っていることを加味してもバーチャル展示場は中長期的に必要になってくると考えられます。

他の3つの施策と比較すると初期費用がかなり高いので導入すべきかは慎重に検討する必要がありますが、今後の工務店DXのためにも一度じっくり検討してみてください。

工務店がDXを成功させるポイント

上記で紹介した他にも様々なDX施策が存在しますが、特にDX系の施策はただやってみただけでは効果を発揮することが少ないです。DXは通常のIT化と異なり、ビジネスモデルに融合させなければならないので、最終的に現場に定着しないと効果がないからです。そのためには次の2つに注意してください。

高機能ではなく使いやすさにこだわる

特に何らかのツールの導入が必要な場合は機能性よりも使いやすさにこだわってください。たとえば顧客管理のためにCRMの導入は検討すべきですが、世の中には様々な情報を管理できて、様々なシステムと連携できる高機能なCRMも存在します。そして、こうした高機能なCRMは操作方法が複雑で導入してみた結果、現場に根付かなかったという事例が往々にして発生します。そして、それよりも最低限の機能しかないCRMの方が意外と現場には定着するといった事態も発生しがちです。

今後のDX施策を展開するために高機能なCRMを導入したいと思われるかもしれませんが、まずは現場に定着するほど使いやすいかどうかを確認したうえでシステムを導入してください。

取り組みを徹底する

中小工務店にありがちなのが、DXのための仕組みは導入して、現場できちんと使いこなせそう、でも定着しないといったケースです。こうなってしまう理由は簡単で現場のオペレーションが徹底されないからです。オンライン商談の仕組みを導入しても施主様を来店誘導してしまう、CRMを導入しても必要事項をなかなか入力してくれないといった事態は往々にして発生します。従業員の視点から見れば新しい仕組みに従うよりも、今までやってきたことをそのまま踏襲する方が精神的に楽だからです。

そのため、定着するまではきちんと従業員が新しい仕組みを使っているかをモニタリングしたり、必要に応じて研修を開いたり、人事評価を改定して新しい仕組みを使うインセンティブを持たせるといった仕掛けが必要です。

中小工務店が勝ち残るためにはDX化が重要

注文住宅の新規着工棟数が長期的に減少すると予想され、なおかつ人手不足・人件費が高騰、施主様の購買行動が変化していることも鑑みると工務店においてDXは必須級の取り組みです。

ただし、大手ビルダーが行っているようなAI活用、i-Constructionといった取り組みを模倣するのは経営資源の観点から不可能です。中小工務店の場合はまずWeb集客、顧客管理、オンライン商談、バーチャル展示場の4つのDX化施策を検討してください。

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