工務店に限らず、客観的に経営状況をチェックするためにはKPI管理が重要です。KPIとは経営にまつわる重要な指標のことを指し、工務店においては展示場への来場者数、商談の成約率、一契約あたりの契約金額などがあります。本コンテンツでは工務店集客におけるKPIと具体的にどのような指標なのかについて解説します。
- KPI設計はなぜ必要か
- KPI管理に使えるシステム
- 工務店が管理すべき代表的なKPIの概要
本コンテンツの学習にかかる目安時間は5分〜10分程度です。
本コンテンツの目次
KPIとは何か?
KPI(Key Performance Indicators)とは日本語で重要業績評価指標と呼ばれる指標のことを指します。具体的に何が重要な指標なのかについてその業種や経営方針によって異なります。後述するように工務店が経営管理をする際にもKPIを用いた状況チェックを実施しなければなりません。
KPIを設定する理由
KPIを設定するのは、経営のどこに長所や課題があるかを明確にするためです。
例えば、今年度の売上は5億円にしようと決めても具体的にどのように活動をしてよいかわかりません。しかし、これを、受注棟数×平均契約金額に分解すると少し目標が明確になります。
5億円=2,500万円/棟×20棟なので、年間20棟受注するためには経験則でモデルルームには年間この程度の誘客が必要だ、現状の平均単価は2,400万円なので2,500万円にするためには営業にもう少し積極的に追加提案をしてもらわないといけないなといったように具体的な行動が考えられます。
年間目標売上の5億円とはKGI(重要目標達成指標)、それを分解した2,500万円、20棟などの目標はKPI呼ばれます。
計画づくりより測定の仕組みづくり
KPI管理に初めて取り組む場合は、平均受注金額やどの程度の行動をすれば1組のモデルルームへの来場者を獲得できるかデータが無いのでそもそも目標が立てられないからKPI管理は無理だと思われるパターンもあります。
KPI管理で重要なのは簡単に測定できるように仕組みを構築することです。そのためKPI管理を始める場合の目標数値は感覚値で十分ですし、スピーディーに数値がでる仕組みがあるのであれば後から実数を見て計画を修正できます。
KPI管理とシステム
KPI管理を手動でするのは限界があります。例えば、平均受注金額を出すために直近の契約書を探して、その金額をすべて足し合わせるといった作業をするのには手間も時間もかかります。効率的にKPIを管理する際に活用したいのがシステムです。
営業に関することならSFA(営業管理システム)、マーケティングならMA(マーケティングオートメーションツール)といったように各業務を管理するシステムを導入することによって、システムから半自動でKPIを算出できるようになります。
マーケティング・営業フェーズごとのKPI
工務店が具体的に管理するべき代表的な6つの指標は次のとおりです。これが唯一の正解ということではなく、この指標をベースに各工務店の経営状況に合わせて、追加のKPIを設定するのも良いです。
- 問い合わせ発生数
- CPA(1件問い合わせ発生コスト)
- 成約率
- CPO(1件成約発生コスト)
- 平均受注金額
- NPS(推奨者の正味比率)
マーケティング・営業フェーズを「マーケティング(見込み客を集める)」「営業(見込み案件を成約させる)」「顧客満足度(お客様から高評価を得る)」の3つのフェーズに分けて、各フェーズ毎に管理したいKPIについて紹介します。
マーケティング(見込み客を集める)
見込み客を集める際の重要指標は「問い合わせ発生数」「CPA(1件問い合わせ発生コスト)」の2つです。特にマーケティング部分についてはWeb広告や折り込みチラシなど広告費を伴う施策が多いので、きちんと2つのKPIが管理できていないと売上は増えても粗利が悪化してしまうといった事態が発生しがちです。
問い合わせ発生数
問い合わせ発生数とは営業見込み案件が発生した数のことを指します。何をもって見込み案件なのかはきちんと定義する必要があります。
モデルルームに来て発生した問い合わせの1件とWebから資料請求しただけの1件では、お客様の本気度が違うのでその後の成約率も異なると考えられます。
まとめて問い合わせ発生数をカウントするのではなく、「Webサイト」「住宅セミナー」「モデルルーム来場」などといったように問い合わせ経路別に問い合わせ発生数を管理した方が良いです。
CPA(1件問い合わせ発生コスト)
1件の問い合わせを獲得するのにどの位の費用が掛かったのかを分析します。広告費÷問い合わせ数で算出できます。この費用が高いと広告費用によって収益が圧迫されて利益が出にくい体質になっているかもしれません。一方でこの費用をほとんど掛けていないと収益を高められる余地があるのに機会損失が発生しているかもしれません。
もちろん、Web広告なのかチラシなのかなど媒体によってCPAは異なるはずなので、余裕があれば媒体別にCPAを管理することが望ましいです。
CPAの算出方法については「より効率的に集客を!CPAの改善方法」も参考にしてください。
その他
より細かく分析しようとすると、Web媒体であればアクセス数×コンバージョン率(問い合わせが発生する確率)、折り込みチラシならば配布枚数×反響率(問い合わせが発生する確率)といったようにさらに細かくKPIを分析することもあります。
営業(見込み案件を成約させる)
マーケティングで発生した問い合わせに営業して成約させる際に気にするべきKPIは「成約率」「CPO」「平均受注金額」の3つです。マーケティングと営業は連動しているので、マーケティング・営業、どちら側のKPIも同じ位重要です。
成約率
問い合わせから商談が決まる確率のことを指します。成約数÷問い合わせ数で算出できます。上手な営業を見定めてその手法を全体に展開するためにも営業ごとに成約率を算出した方が良いです。
また、さらに余力があるのであれば設計契約までの成約率、その後最終的に成約する確率といったようにフェーズごとの成約率も分析した方が良いです。
CPO(1件成約発生コスト)
1件の成約を獲得するために必要なコストのことを指します。「成約数÷広告費」で算出できます。目安は平均受注金額の3%です。例えば、平均受注金額が2,500万円なら、2,500万円×3%=75万円が1件あたりの成約にかけて良い広告コストの目安になります。
CPAと似ていますが、CPOは成約率に影響を受けるので営業のテクニックで向上させることが可能です。
平均受注金額
1契約あたりの平均受注金額のことを指します。過去の受注履歴から分析できますし、広告費の目安を決めるために必要な数値なのでKPI管理に取り組む場合はまずこの値がでるようにするべきです。工務店の扱っている住宅のランクによって大きく異なるで目安がどの位とは一概にいえませんが、平均受注金額をあげるためには工務店として単価アップ提案の手法を管理しなければなりません。
その他
その他、営業フェーズにおいて管理するKPIとしては接触頻度(お客様に定期的に接触で来ているか)、平均商談成約月数(商談が何か月くらいで決まるか、建築側のキャパシティ、資金繰り管理のために管理が必要)などがあります。
顧客満足度(お客様から高評価を得る)
工務店はお客様と住宅を通じて一生の付き合いをする可能性があるのでお客様との関係管理は重要です。住宅を建てた後もリフォームなどを依頼されるかもしれませんし、OB顧客からの紹介をもらえるかもしれません。顧客満足度を測定するKPIとしてはNPSという指標があります。
NPS(推奨者の正味比率)
近年注目されている手法で、お客様に「友人にこの工務店をどの位薦めたいですか?」というアンケートを行い10点満点で評価してもらいます。その結果を0~6点:批判者、7~8点:中立者、9~10点:推奨者と3つに分類して、(推奨者―批判者)/全回答数で求めます。
その他
顧客満足度はお客様の主観に依存するので測定しにくいKPIではありますが、他にもLTV(生涯顧客価値)、CAST(NPSの簡易版のような調査)のような指標で管理している会社もあります。
KPI管理で工務店経営の「見える化」を
KPI管理を行うことによって、数字に基づいた客観的な工務店の経営管理が可能となります。もちろん、KPIだけではなく、会社の雰囲気の良さやお客様との関係性など目に見えにくいものも工務店経営にとって大事ですが、ベースにKPI管理が無いと問題発見や課題に対する対策の効果が検証できなくなります。慣れれば楽なのでぜひ工務店経営にKPI管理を取り入れてください。