
一般的に紹介・リピート受注は営業工程も集客コストも削減できるので、工務店に確実に利益を残すための重要な要素だと考えられています。ただし、実際に戦略的に紹介・リピートを獲得できている工務店はごくわずかです。
本コンテンツでは工務店が紹介による受注・リピートを獲得するための戦略・手法について紹介します。
- 工務店が紹介・リピートを戦略的に獲得するための基本的な考え方
- 紹介を生み出すための施策
- 地域密着型工務店が安定的に利益を残すための実践的な集客方法
本コンテンツの学習にかかる目安時間は10分〜15分程度です。
本コンテンツの目次
工務店集客における紹介・リピート獲得の意義
工務店集客において紹介・リピート獲得が重要とはよく言われますが、これには大きく分けて3つの理由が存在します。まずは工務店がなぜ紹介・リピートを獲得するべきなのかについて整理します。
地域密着ビジネスとの相性が良い
一部のハウスメーカー・ビルダーを除いて工務店は基本的に地域密着ビジネスです。通販のように全国展開できないのはもちろん、工務店事務所や住宅展示場などから離れるほど集客のコスパが悪くなるので、どうしても地域に根差して営業することになります。
こういった地域密着ビジネスでまず考えなければならないのは地域内のシェアをどのように高めるのか?ということです。もちろん、Web集客・チラシ配布などを駆使したマーケティング活動は必要ですが、一つの理想の形は地域の人々に「家のことで困ったら、あの会社にとりあえず聞いてみよう」と思われる状態になることです。
そのためには新規のお客様にコストをかけて獲得するだけではなく、住宅を建てた・リフォームしたお客様から再度工事を受注する、お客様から他のお客様を紹介してもらい地域から自然と選ばれる工務店作りをしなければなりません。
こうした取り組みを実施することによって、地域に根差した足腰の強い工務店となります。
集客コスト・営業工程を削減できる
集客コスト・営業工程を削減できるのも紹介・リピート受注のメリットです。
通常、マーケティングで新規顧客を獲得した場合、1件の注文を獲得するのに数万円程度の費用が発生します。こうした広告費用は工務店の利益を圧迫するので、売上は上がるけど利益は想定よりも少ない、広告のコストパフォーマンスの悪化が経営不振に直結するといった事態を発生させかねません。
こういった事態を防ぐためには、新規と既存顧客のバランスについて確認したうえで、意識的に既存顧客からの紹介・リピートを獲得できる体制作りが必要です。
既存顧客からの紹介・リピート受注の場合、割引やキャンペーンを実施しても新規顧客を1件獲得するよりも格段に広告費を圧縮したうえで売上を創出できます。
そのうえで、営業工程を削減できるのもメリットです。新規顧客の場合は、顧客との信頼関係構築から行う必要があり、なかなか具体的な商談に到達するのも、そこから成約に至るまでにも時間が必要です。一方で、既存顧客のリピートの場合は基本的な信頼関係はすでに構築されているし、紹介案件も紹介してくれる顧客がある程度工務店に対する信頼感を醸成してくれているので、信頼関係構築のステップが迅速に進みます。
信頼度が高く成約率アップも期待できる
リピート・紹介営業の信頼度が高いというメリットは成約率アップ効果も期待できます。住宅関連のサービスは高単価なので基本的に新規顧客は相見積もりをしていると考えるべきです。
相見積もりをしているということはもちろんそれだけ成約率は下がります。また、他の工務店も売上を創出するために様々な営業施策を展開しているはずなので、どれだけ工務店が努力しても成約率が振るわないといったことも想定されます。
紹介・リピート案件を獲得するメリットはこういった相見積もりを回避する、あるいは有利なポジションで見積もりを提出できることにあります。こういった成約率の向上は営業活動に対する歩留まり向上、生産性向上効果が期待できます。
なぜ、ほとんどの工務店は紹介・リピートを獲得できないのか?
以上のように工務店経営において重要な紹介・リピートですが、多くの工務店では戦略的にリピートを獲得できていません。もちろん中には工事の品質を気に入ってくれてリピート・紹介してくれる施主様は存在するかもしれませんが、積極的にリピート・紹介を発生させるためには単純に新規を獲得するよりも丁寧な準備が必要になります。
紹介・リピートが発生していない工務店は、そもそも紹介・リピートを発生させる施策を展開していない、もしくは施策はあるものの工務店の都合ありきで施策を展開しておりOB顧客の心を動かせていないという2つのパターンが考えられます。
前者については紹介キャンペーンやアフターフォロー営業などを実施すればすぐに解決できますが、後者については会社としての在り方やサービス内容、経営戦略まで根差す問題なので正しいアプローチで向き合わないと解決しません。
紹介受注・リピート獲得のための基本戦略
紹介受注・リピート獲得を達成するためには次の3つの方針に基づいて具体的にどのような施策を実施するのかを検討しなければなりません。紹介・リピート獲得のための3つの基本戦略について説明します。
住宅の品質だけではなくスタッフの接遇にも手間をかける
紹介・リピートが獲得できるのを強みにしたいのであれば、住宅の品質だけではなくスタッフの接遇力向上にも手間をかける必要があります。
競争力のある工務店であれば住宅工事の品質は一定レベル以上あり、施主様がそこにどの部分に工務店独自の魅力を感じるのかが難しいので単純に品質だけで差別化するのは困難です。それよりもどちらかといえば、「あの営業担当者の説明が分かりやすかった」、「あの施工スタッフさんの服装が清潔だった」といった人にまつわるエピソードの方がお客様の印象に強く残り、リピート・紹介を獲得するための重要な要素となります。
そのため、ただ施工技術を磨いたり、コストダウンに励んだりするだけではなくスタッフのホスピタリティーを向上させる、さまざまな施策を展開しなければなりません。
紹介・リピートをしたくなる仕組みを作る
紹介したくなる仕組み作りも必要です。紹介したくなる仕組み作りにはインセンティブを与えること、その工務店の魅力を相手に伝えることの両輪を回す必要があります。
インセンティブを与える施策としては紹介キャンペーン、施工後アフターフォローといった施策が考えられます。
ただし、こういったキャンペーンを展開して、そこに費用や手間をかけたとしてもお客様の工務店に対するロイヤリティが低ければ充分な効果を得られません。そこで必要なのが工務店の魅力を相手に伝える施策です。
「工務店の魅力」が何を指すかについては、その工務店によって異なりますが、少なくとも自工務店がどのような工務店かを言語化してお客様に説明できること、その特徴がお客様に支持されるような要素を持っていることが必要です。
詳しくは工務店マーケ内の下記の記事を参照ください。
参考:工務店におけるブランディングのポイント
参考:3C分析のやり方 競合の分析を工務店の戦略策定に生かそう
地域密着でコミュニケーションを途切れさせない
工務店が紹介・リピート案件を獲得するためには、地域に密着することとコミュニケーションを途切れさせないことの2つが重要です。
リピート・紹介を促進するためには色々な要素がありますが、一つの重要な要素が接触頻度です。ただし、注文住宅は基本的に一生に一度、リフォームは数年に一度ということで、通常の手法ではリピート・紹介を発生させるのに十分なコミュニケーション機会を確保できていません。
結果として「何年か前にリフォームを頼んだあの工務店はどこだっけ?」となり、お客様は再び相見積もりのために目についた色々な工務店に連絡を取ります。
せっかく一度発注してくれた施主様をコミュニケーション頻度の問題で喪失しないためには、地域に密着したコミュニケーション施策を実施すべきです。たとえば商圏内の目立つ所や駅のホームにその工務店の看板があればお客様は毎日のようにその工務店について思い出すかもしれませんし、感謝祭のようなイベントを開催すればそこで工務店に良い印象を持つかもしれません。
このように地域に密着すること、地域に根差した集客活動・イベントによりお客様と常に接点を持ち、工務店のことを想起してもらえるような仕組み作りをしてください。
紹介を増やすために実施したい施策
上記のような基本戦略に基づいて工務店の紹介・リピート戦略は考えるべきですが、ではこのような戦略に基づけば具体的にどのような施策が考えられるのかについて3つの切り口から記載します。基本的な施策は次の3つですが、細部を詰めようとするとその工務店のある地域特性や工務店自体の特性によって大きく異なります。そのため、本コンテンツで紹介していることをベースに工務店内でリピート・紹介の獲得について話し合うのが良いです。話し合う際にはお客様が喜ぶ、楽しめる接触頻度の保ち方についてどうあるべきかを念頭に置きながら話し合ってください。
工事のアフターフォロー計画を立てる
工務店が合理的に顧客と接触できる機会としてまず挙げられるのが、住宅の定期点検に代表されるアフターフォローのタイミングです。もちろんアフターフォローに手間をかけるとそれだけ費用が発生するので工務店収益を悪化させる可能性がありますが、一方でアフターフォローは接触頻度の確保、追加のリフォーム工事の依頼を獲得するための重要な機会だったりします。
そのため、工事後の施主様にどのようなアフターフォローをするのか、その時にどのような提案をするのかについてはある程度会社でルールを決定したうえで、ルール通りに正しく振る舞えるようにロープレを実施する必要があります。
この計画に基づいて顧客にアプローチ、費用対効果・顧客満足度などを分析してPDCAを回して精度の高い、紹介・リピートの発生源にしてください。
キャンペーン・インセンティブで後押しをする
工務店の持つ強みを明確にしてそこをアピールすれば、施主様は工務店に良い印象を持ってくれるかもしれません。ただし、良い印象だけでは紹介・リピートは発生しないので後押しするキャンペーン・インセンティブ施策が必要になります。
紹介獲得のためによく使われるオーソドックスな手法としては紹介制度が挙げられます。紹介制度とは、紹介された顧客が実際に工事を成約した場合に、紹介者と被紹介者の双方に特典を提供する仕組みです。
この他にもリピートを喚起するための施策として定期点検としてお客様の住宅の点検、そこからリフォームを受注するといったパターンも存在します。
制度が存在するだけでは活用されない、忘れられるので次で紹介する「平時から繋がれる媒体・イベントを作る」の部分をきちんと実行していないと制度だけ用意しても成果が出ない点にはご注意ください。
平時から繋がれる媒体・イベントを作る
住宅関連の商品・サービスの場合は購買頻度が低いので、どうしてもお客様は工務店のことを忘れがちになります。こういったデメリットを防ぐためには、平時から繋がれる媒体・イベントを用意するべきです。
たとえば、手軽に大量のOB顧客向けに情報発信をする手段としてメールマガジン・ニュースレターといった手法が考えられます。この他にOB顧客向けの感謝祭やゴルフコンペといった企画を実施する工務店も存在します。
また、平時から繋がるといった観点では、地域密着型の工務店の場合はエリア内の主要道路や公共交通機関などに看板・広告を設置することも有効です。こういった広告を定期的にOB顧客が見ることによって工務店のことを想起して、工務店のことを忘れない、何か住宅でトラブルがあったときに工務店のことを思い出してもらえるというメリットが発生します。
いずれにしてもOB顧客からのリピート・紹介受注は通常の新規よりも多くのメリットがあるので、少し費用がかかる場合でも実施すべきです。年間の販促スケジュールにあらかじめ盛り込んだうえで、確実に予算を確保してください。
工務店が紹介受注・リピートを増やすためには
以上のように工務店が紹介受注・リピートを増やすための方法について解説しました。地域密着型の工務店の場合、紹介受注・リピートをいかに獲得するのかが工務店の業績に大きな影響を与えます。
ポイントはリピート・紹介のための仕組みを構築することと、OB顧客がリピート・紹介をしたいと思うインセンティブを設計することの2つで、両方を満たしてリピート・紹介が発生します。
ぜひ、本コンテンツで紹介した手法を参考に、OB顧客向けのマーケティングを実施してください。










