
工務店の業績アップ施策において取り組まなければならないのが広告施策です。数多ある工務店の中から施主様に選ばれるには、さまざまな広告施策で工務店の認知度向上や問い合わせ数獲得を推進しなければなりません。
本コンテンツではWeb集客に限定せず、チラシなどを含めて総合的な工務店の広告戦略について説明します。
- 工務店が活用できるWeb・紙・屋外広告など多様な広告手法の特徴と選び方
- 各広告施策のメリット・デメリット・費用感を比較して最適な組み合わせを検討する方法
- 広告から成約までの一貫した戦略構築とCPA管理による利益確保の重要性
本コンテンツの学習にかかる目安時間は5分〜10分程度です。
本コンテンツの目次
工務店における広告の役割と必要性
中長期的に着工棟数の減少が予想される中、工務店においては顧客獲得のためにさまざまな広告施策を展開しなければなりません。というのも広告施策の善し悪しが工務店の業績に直結しやすいからです。
注文住宅で売上をあげようとすれば毎年新規案件を獲得しなければなりませんが、住宅の購買頻度は低く、単価も高いので大小関わらず多くの工務店が広告投資をしています。広告費をケチると目標棟数分の注文を獲得できないし、逆に掛け過ぎると収益を圧迫します。
そのため、自社の強みを分析したうえで会社全体の戦略にあった広告戦略を展開して、効率的に注文を獲得する必要があります。そのためには闇雲に広告費を投資するのではなく、各広告手法の違いを踏まえたうえで自社にあった広告施策を展開する必要があります。
工務店が活用できる広告手法一覧
広告を実施する際は工務店ごとの戦略に合わせた広告媒体を使わなければならないとして、工務店の場合どのような広告施策が具体的に考えられるのかについて代表的な手法を紹介します。
Google広告(リスティング、P-MAX、ディスプレイ)
Google広告とはGoogleが提供している広告サービスのことを指します。Google検索の結果の目立つところ(リスティング広告)、Googleが抑えている様々なWebサイトの広告枠(ディスプレイ)などさまざまな場所に広告を掲載できます。
一見難しく聞こえるかもしれませんが、近年はAIが広告出稿をサポートしているので、少し調べれば初心者でも広告を出せます。たとえばP-MAXといった広告の配信方法ではGoogleが保有しているすべての広告枠に広告をほとんど自動掲載、パフォーマンスを最大化するための設定の調整もAIが自動でやってくれるので、広告の予算と目標、アセット(広告用のテキスト、画像、動画)、広告を見せたいターゲットを達成すればあとの調整にほとんど専門的な知識は必要ありません。
SNS広告(Instagram、Facebook)
Instagramアカウントを開設して情報発信をしている工務店も当たり前に存在しますが、さらにInstagram集客に力を入れるのであればInstagram広告を活用しても良いかもしれません。
ちなみにInstagramとFacebookは同じ会社のサービスなので一つの広告配信ツールでInstagramにもFacebookにも広告が配信できます。
InstagramやFacebook広告を活用するメリットはターゲティングの細かさにあります。これらのSNSにはユーザーの住んでいる地域や趣味、年齢などさまざまな情報が登録されているので自工務店のターゲット像に適合するように細かく設定を調整できます。
またInstagramやFacebookに限らず、各SNSは広告枠を販売しているのでこういったSNS広告での集客も良い手段です。
LINE広告(地域密着型の活用)
LINEもSNSの一種ですが、他のSNSと少し活用方法が違います。他のSNSは新規獲得を念頭に使われることが多いのにたいして、LINEは定期的な情報発信(いわゆる顧客育成)のために使用されることが多いです。
日本の全人口の80%はLINEを使用していると言われており、携帯を持たない世代以外はほぼすべての人がLINEを日常的に使用しています。よって、どちらかといえばLINEは工務店について興味を持ってくれたお客さんに情報を発信し、セミナーやイベントなどに集客するためのツールとして位置づけられます。
個人のLINEは無料ですが、ビジネス向けのLINEアカウントでは配信先1通当たり3円の広告料が必要となります。広告費がかかるのでCPAをコントロールしなければなりませんが、とくに顧客の検討期間が長い注文住宅のような商材においては成約までのコミュニケーションツールとして非常に有効です。
折込チラシ(向いている地域層と工務店の特徴)
徐々にWeb集客に工務店の広告手法は移行しつつありますが、今もなお折込チラシによる広告は有効です。ただし、運用に当たってはエリア選定が必要です。
例えば、注文住宅の成約を期待して広告するならば30代前後のファミリーが住んでいそうな賃貸マンションの多そうなエリアに絞るべきですし、リフォームを狙うのであれば戸建て住宅の多いエリアに絞るべきです。折込チラシの場合はエリアは絞れても年齢などは絞れないので、工務店側が予想して調整する必要があります。
ちなみに折込チラシからいきなり住宅を建てる相談にはなりにくいので、相談会や工務店のお祭り、住宅展示場などへの誘導を1回挟まないと最終的な成約にはつながりにくいです。折込チラシで成果を上げる場合はこういったチラシで人を集めた後の手段をきちんと整備している工務店の方が成果を上げやすい傾向にあります。
地域情報誌・フリーペーパー
特に地域密着型の工務店の場合は、地域情報誌、フリーペーパーなどでの広告配信も良いでしょう。ただし、広告をして成果があがるかは読者層にも大きく依存するので、地域情報誌・フリーペーパーなどの発行部数、読者層などを記載した媒体資料をもとに自社のターゲット層と合致しそうな配信先なのかは吟味してください。
加えて、情報誌はどちらかといえば、継続的に広告を掲載して認知度を高め、最終的にいつか発生する住宅購入ニーズに備える手法です。そのため。基本的には継続的に掲載できるように広告予算を確保すべきです。
また、予算はかかりますが、媒体によっては媒体社が工務店の取材をして通常の記事と同じような形で工務店を紹介してくれる取材広告も存在します。
看板・交通広告(など)
田舎や高齢化が進んでいる商圏においては看板・交通広告といった手法もいまもなお有効です。工務店の商圏範囲内の主要道路沿いに設置するのが一般的です。
媒体によって広告費用はピンキリで、看板を設置するコストも考慮すれば初期コストは比較的高めです。また、その看板がどの程度成約に貢献しているのかを測定するのが困難なので、費用対効果が見えにくいといったデメリットも存在します。ただし、地域密着型の工務店の場合、ハマれば大きな認知度アップ、成約獲得効果が期待できます。
施策別のメリット・デメリットと費用感
施策別のメリット・デメリットや費用感をまとめると下記の表のとおりになります。ただし、個別の工務店の状況においてメリット・デメリットが小さくなったり、大きくなったりするので自工務店の状況に置き換えて必ずメリット・デメリットを分析する必要があります。基本的にはLINE広告は必須として、Web系の集客策1種類、Web以外の集客策1種類の3種類程度の広告手法は使用するべきです。
媒体 | メリット | デメリット | 最低費用 |
---|---|---|---|
Google広告 | ●インターネットで色々な調べものをしているユーザーにアプローチできる ●工務店ごとの予算に合わせて安価な広告運用が可能 |
●さまざまな工務店が広告を配信しているので広告費は高騰しがち ●システムが広告調整までやってくれるが、詳しく分析しようと思えば一定の専門知識が必要 |
初期費用0円、広告費用数千円から予算に合わせて運用可能 |
SNS広告 | ●ターゲット像を他の広告媒体よりも細かく設定できる ●工務店ごとの予算に合わせて安価な広告運用が可能 |
●コンテンツ制作に手間がかかる ●配信方法によっては炎上リスクがある |
初期費用0円、広告費用数千円から予算に合わせて運用可能 |
LINE広告 | ●登録してくれているユーザーに安価に情報発信ができる ●ユーザー数が多く、広告をみられる確率も高い |
●基本的には登録してもらわないと広告を配信できない ●他のSNSと比較して拡散力は弱い |
初期費用0円、1配信あたり3円程度で運用可能 |
折込チラシ | ●インターネットを普段使っていないローカルな客層にアプローチできる ●イベントや相談会の来場者確保に使いやすい |
●Web集客と比較すると1ユーザーあたりにリーチする費用が高い ●エリア選定を失敗すると効果がでにくい |
チラシの印刷費、配布費込みで1枚20~30円程度から運用可能 |
地域情報誌・フリーペーパー | ●地域に密着した工務店としてブランディングできる ●記事広告を活用すれば深く工務店の事を知って貰える |
●継続的に広告を配信しないと効果が出にくい ●媒体読者と顧客層をきちんと擦り合わせないと成果が出にくい |
発行部数に応じて数万円~数十万円程度 |
看板・交通広告(など) | ●地域に密着した工務店としてブランディングできる ●条件がピンキリなので良い媒体を見つければコスパよく広告を配信できる |
●初期費用が高価になりがち ●費用対効果を読みにくい |
看板作成・設置・広告費用を含めて数十万円程度の初期費用、掲載費用については媒体によってピンキリ |
工務店広告で失敗しないための4つのポイント
上記のとおり工務店が使用しうる主要な広告方法とその比較を行いましたが、どの広告を選択するかの前に必ず正しい広告戦略を立案するために次の4つのポイントに気をつけるべきです。
広告戦略を立案する際の4つのポイントについて説明します。
広告から営業、成約までの流れに一貫性を持たせる
お客様を集めて住宅工事の注文を獲得するという一連の流れは広告だけで完了するわけではありません。広告によって見込み顧客を集めたあとは営業によってお客様のロイヤリティを高めて成約まで到達しなければなりません。
そのため、広告戦略単体を考えるのではなく工務店全体でお客様とどのように出会って、ロイヤリティを高めて、成約させて、住宅を提供させて、アフターフォローを実施してリフォームなどに繋げるのかという利益創出全体のストーリーを描く必要があります。
とくに気を付けなければならないのは広告と営業のつなぎ目です。広告担当者の立場であればできるだけ見込み顧客を増やしたい、営業担当者は見込みの薄い顧客に対する営業はしたくないということで反発しあうこともあります。こういった反発を無くし、適切な広告戦略を実施するためには広告戦力からではなく売り上げを生み出す一貫したストーリーから会社全体で考える必要があります。
利益が残るようにCPAをコントロールする
広告を使えば注文は獲得できますが、もちろん広告には広告費が発生します。そして、広告費が高ければ利益を圧迫するといった事態も想定されます。広告は戦略に基づいて実行すれば良いというだけではなく、そのコストパフォーマンスについてもコントロールする必要があります。
工務店に限らず広告のコストパフォーマンスを示す指標としてはCPAが存在します。CPAとは1件の注文を獲得するコストのことを指します。工務店の目標としては受注金額の3%程度が目安とされています。
CPAを目標金額内に収めるためには、目標受注棟数と広告予算、目標を達成するための広告施策を計画する、定期的に成果について分析する、分析結果に応じて施策を修正するといったいわゆるPDCAサイクルを回す必要があります。
ただ受注棟数を増やすだけではなく、会社の営業利益を増やすためにもCPAのコントロールは意識してください。
担当者に一定の権限を持たせる、外注も効果的に使う
広告施策と一口にいっても前章であげたとおり様々な施策が存在します。そして、これらの施策それぞれがやり方は違うので全部の施策を片手間で管理するのは困難です。とくに中小工務店の場合は、広告専任の担当者はいないので社長などの経営陣が兼務するといったケースは珍しくありません。そして、社長も忙しいので結局広告施策が進まないといった事態になりがちです。
こういった事態を防ぐためには、現場の担当者に一定の権限を委譲したうえで広告施策を任せる、もしくは外注するといった手法が効果的です。もちろん担当者が前章で紹介したすべての広告を完璧にこなすのは困難なので多くて2〜3種類の施策を管理できれば十分です。そのための広告予算や目標、大まかな手法は経営陣が決めて、あとは現場担当者に任せて適宜報告を受けるといった体制がおすすめです。
また、こういった体制を構築するのが困難な場合は、外注に任せてしまった方が効率的です。外注に委託するともちろん外注費はかかってしまいますが、工務店の場合は注文1件あたりの単価が高いので、はじめから一定以上の技術をもっている外注先に任せてしまった方が結果として大きな収益につながるケースが多いです。
広告をかけても工務店のサービス力が弱ければ意味がない
広告戦略だけではなく利益を生み出すためのストーリーを前提として考えなければならないのは説明した通りですが、さらに前提として工務店のサービス力が弱ければ広告を頑張っても意味がありません。
つまり、提供している注文住宅やリフォームのコストパフォーマンスが悪ければ、結局広告でお客様を集めても成約しないということです。インターネットが普及している現代において消費者は簡単に相見積もりをするので、コストパフォーマンスが悪いと思われれば成約しない確率が高まります。
もちろん注文住宅やリフォームのサービス品質を向上させるためには不断の努力が必要ですが、簡単に改善できて大きな改善につながることが2点存在します。自社の強みを明確化すること、お客様の評判を管理することです。
自社の強みを明確にすることはすなわち工務店や提供している住宅サービスの強みであったり良さを言語化したりすることです。お客様からの評判を管理することは口コミサイトなどに書かれているレビューの数を増やしたり、評点を上げようとしたりすることです。
良い商品・サービスを開発する事、それを可視化することの2段階の施策が必要ですが後者についてはすぐにでも取り組めます。
正しい広告戦略で工務店業績を飛躍させよう
新規着工棟数は減少しているので、各工務店は注文を獲得するためにさまざまな広告施策に取り組んでいます。そして商材の性質上、リピートは発生しにくいので常に新規顧客を追いかけ続けなければなりません。そのため工務店において広告は重要です。
ただし、広告といっても色々な媒体が存在しますし、前提として正しいポイントを抑えた広告戦略を立案しないと効果は出ません。ぜひ工務店の集客が上手くいっていないといった場合は広告戦略について見直してください。