お客様から積極的に選ばれる工務店になるために、ブランディングは重要なテーマの1つです。
ブランディングを行うことによって価格競争回避や収益率アップなどの良い効果が期待できます。
本コンテンツでは工務店向けにそもそも「ブランド」とは何か?ブランディング実施にあたってののポイントについて解説します。
- ブランディングとは何か
- ブランディングを行う際のポイント
- 工務店におけるブランディングの事例
本コンテンツの学習にかかる目安時間は5分〜10分程度です。
本コンテンツの目次
ブランディングとは何か
「ブランディング」とはブランドの認知度や信頼感を高めるマーケティング活動のことを指します。
「ブランド」とはある商品を別の商品から区別するための一連の要素となります。
例えば、スマートフォンにはiPhoneやPixel、Galaxyなどさまざまなブランドがありますが、日本で最も使用者が多いのはiPhoneです。
しかし、iPhoneは他のブランドと比較すると価格帯が高く、同程度のスペックの機種がASUSやHUAWEIなら格安で購入できます。
それでも、日本に住む多くの人がiPhoneを好んでいるのは Apple製品の先進的なイメージやデザイン性の高いイメージ、耐久性やセキュリティに関する信頼性などiPhoneブランド(Appleブランド)へ良いイメージを持っているからです。
ブランドとはこのような価格やカタログスペックなどでは表現できない、消費者からの商品・サービスに対する信頼とイメージの蓄積のことを指します。
これは工務店に限った話ではありませんが、自社の「社名」「ブランド名」「住宅商品名」を住宅検討者(ターゲット顧客)が耳にした時に何を第一に想起(イメージ)してほしいかという点について最初に考えることが大切です。
工務店がブランディングを行うべき理由
工務店をブランド化することにより、価格競争を回避し収益を確保した工務店運営が可能となります。
工務店がブランディングを行うべき理由は以下の3つの理由からです。
価格競争を回避できる
ブランド商品は単に価格やスペックだけではなく、そのブランドが持っている信頼性までお客様の価値判断基準となります。
特に住宅のように何十年にわたって使い続ける商品の場合は、ただコストパフォーマンスが良さそうというだけではなく、建設する工務店が信頼できそうかというのもお客様にとって重要です。
信頼と実績を積み重ねて成長してきたブランド工務店の住宅は多少高くても購入するので、価格競争を回避し、収益を確保した工務店運営が可能となります。
マーケティング・販促の効果が高まる
ブランドにはマーケティング・販促効果を高めるメリットもあります。
いくらチラシやテレビCMを流したとしてもそもそも信頼できそうにない工務店にはお客様は問い合わせしようとしません。
お客様から問い合わせが発生する前提としてその工務店のブランド力は重要な要素の1つなので、コツコツとブランディングに取り組んできた工務店の方がマーケティング・販促でも高い効果を得られます。
社内の意識統一、モチベーション向上に役立つ
ブランディングの効果は対顧客だけではなく従業員にも及びます。
ブランド力には社員の帰属意識を呼び覚ます効果もあり、その工務店のブランドを守るために自律的に行動することを促す・モチベーションを向上させる効果が期待できます。
また、採用においてもブランド力を持った工務店の方が、良い人材を採用しやすい傾向があります。
工務店がブランディングを行う際に考慮するポイント
ブランディングを行う際には「コンセプトにこだわる」「コンセプトからサービスまで筋を通す」「ブランドに信頼を蓄積する」と3つの重要なポイントがあります。それぞれのポイントについて説明します。
コンセプトにこだわる
コンセプトはそのブランドの成否を決める重要な要素となります。
コンセプトは自社の強みと競合の強みとの差分、自社の家づくりに対する理念などによって決定されます。
一度コンセプトを決めると様々な経営の要素がそれに従わなければなりませんし、急に変えるのは無理なのでコンセプトについては熟慮してください。
後ほどの事例にも出てきますが、コンセプトが異なる複数の要素を売りにしたい場合、1つの会社でもブランドを分けるという手もあります。
またコンセプトと一緒にそのターゲットは具体的にどのような人物になるのか、いわゆるペルソナについても作成しておくべきです。
コンセプトからサービスまで筋を通す
コンセプトからロゴやキャチコピーなどのクリエイティブが派生するのは想像に難くないことですが、ブランドのコンセプトは他にも様々な要素に影響を与えます。
例えば、無添加住宅をキーワードにしている工務店の場合、化学物質が入った断熱材や防腐剤などはできるだけ使用しない方が良いですし、使用する際はなぜ無添加なのに使っているのか合理的な説明が必要になります。
他にも地域密着型の工務店なのに営業所のない他府県などでも積極的に仕事を受注しているのであればコンセプトに反した営業をしていることになります。
お客様から信頼されるブランドを作るためにはそのコンセプトからサービス内容に至るまで一本筋を通さなければなりません。
ブランドに信頼を蓄積する
ロゴやコピーなどブランドの外見を作っただけではブランドとして本当に意味では機能しません。ブランディングにより信頼を蓄積することによって、お客様に支持されるブランドに昇華できます。
信頼の蓄積は難しく、失うのは一瞬なので工務店をブランド化しようしている企業は、信頼を蓄積することを意識しながら日々経営に取り組んでください。
特に工務店において注意を払いたいのは、施工事例です。
企業ががマーケティング活動の中で消費者向けに発信する情報の中で、視覚情報がとても大きな影響を及ぼします。
特に住宅業界ではInstagram(インスタグラム)などを始めとした写真共有SNSが普及したことにより「住宅の写真」の活用が重要となりました。
多くの工務店では施工事例の写真をホームページなどで掲載していますが、とにかく全ての施工事例を載せようようとするケースがよく見られます。
たしかに多くの棟数をこなしているというアピールも1つの信頼性の形成になりますが、昨今では Instagram (インスタグラム) や Pinterest (ピンタレスト)などを通して消費者の目が肥えているため、デザイン性の高い特にこだわった写真のみを掲載する方が集客観点では良い傾向があります。
また、当然のことながら、築きたいブランドに沿わない事例を載せるべきではありません。
もちろんこの点はSEO対策との兼ね合いも出てくるので、もしSEOの観点で量の少なさが、致命的になりそうな場合は施工事例を減らさずにデザイン性の高い写真に多くの回数接触できるようにホームページの構成を工夫するなどの施策も合わせて検討実施する必要があります。
ただし、どんな場合においても見栄えの良い住宅写真はなるべく自社内でストックできるように、施工写真へこだわる事は非常に重要です。
参考:インスタグラムの使い方 基本編~工務店の活用事例20選~
参考:工務店向けSEO対策 基礎講座
参考:施工事例コンテンツの作り方
工務店のブランディングにおいて注意すべき点
ブランドを育てるには時間がかかる
言うまでもありませんが、ブランドというのは短期的に成立するものではなく、長期的に育てていくものです。
そのため、日々のビジネスにおいてお客様との信頼を築いていくことや、発信する情報を磨き続けることが何よりも大切です。
効果が出なくても諦めず、長い目で見て施策を続けていきましょう。
ブランドを育てるには時間がかかるが壊れるのは一瞬
ブランドを築くことは大変ですが、崩れるのは一瞬です。
ニュースになるような企業の例を見てもわかる通り、不祥事や法令違反、悪評によってブランドにはすぐに悪いイメージが着いてしまいます。
一度失った信頼を取り戻すことは非常に難しいため、常にお客様への対応に気をつけましょう。
工務店におけるブランディングの事例
工務店やハウスメーカーには既に自社ブランドの住宅シリーズを展開している企業がいくつか存在します。
今回はその中でも有名なブランドとして「スウェーデンハウス」、地域密着型の工務店の事例として「YouHouse」を取り上げます。
スウェーデンハウス
スウェーデンハウスはその名の通り北欧デザインの住宅を共有しているハウスメーカーで全国11か所に営業所や支店を構えています。
ブランドコンセプトとして「世代を越えて住み継ぐ家づくり」「高性能なワンスペックの家を作り続ける」「お引渡しから始まるオーナー様との長いお付き合い」の3つを掲げています。
「オリコン顧客満足度調査 ハウスメーカー 注文住宅」において2015年から2021年まで7年連続で総合1位を受賞している人気のハウスメーカーです。
マーケティング施策としてトリッキーなことを行っているわけではなく、他の大手企業と差別化するために自社のブランドコンセプトを明確にして住宅展示場やWebなどを通じて、ブランドに対する信頼を積み重ねてきた実績がこのブランド力に繋がっていると考えられます。
YouHouse
工務店のブランディングというのは全国展開している工務店だけのテーマだけではなく、地域に密着した工務店においても重要なテーマとなります。
岐阜県各務原市に4拠点を構える大雄という住宅メーカーではYouHouseというオリジナル住宅ブランドを展開しています。
YouHouseはさらに「ソラータ」「アイレ」「グラン」の3つのシリーズがあり、各シリーズによってブランドコンセプトを差別化しています。
「ソラータ」は定額料金制の注文住宅、「アイレ」は高い気密性と断熱性を持ったユーハウスの家に全館空調システム「 YUCACO (ユカコ)システム 」を導入した住まい、鉄骨造や RC 造で主流のラーメン構法を、日本の木造住宅に取り入れた「SE構法」を採用しています。
ブランドコンセプトと言えば難しく聞こえるかもしれませんが、簡単に言えば工務店としての品質に対するこだわりを明確にすることであり、中小工務店がブランドを持つことは決して難しいことではありません。
YouHouseには中小規模の工務店がどのようにブランドを展開するべきかのヒントが多分に含まれています。
ブランディングとは信頼と共感を蓄積すること
ブランディングとは工務店やそのサービスに対して信頼や共感を蓄積することで、お客様から支持されてはじめてブランドとして昇華します。
そのため一朝一夕ではブランドを作るのは難しく、継続的な認知度向上、信頼アップ施策が必要となります。
ブランドを確立すればいたずらな価格競争を回避したり、従業員のモチベーションが高まったりとさまざまな効果が期待できます。