工務店の業績を左右する要素として、住宅営業のセールストークの品質があります。
特に注文住宅は商談をしている際には引き渡す住宅はなく、契約が成立して建築しはじめ、引き渡しなので成約するか否かは営業担当のセールストークの技量に依存しがちです。
本コンテンツでは住宅営業のセールストークにおけるポイントを説明します。
- 住宅営業のセールストークのポイント
- セールストークのステップごとに意識すること
- 住宅営業が商大に向き合う際の心構え
本コンテンツの学習にかかる目安時間は10分〜15分程度です。
本コンテンツの目次
住宅営業のセールストークの特徴
セールストークといっても、業界や商材によってトークのコツは微妙に異なります。
まずは住宅営業の特徴を明確にすることにより、どのようなセールストークが求められるのかを説明します。住宅という商材の特徴的な点は次の3つです。
1件あたりの単価が高い
住宅は人生で一番高い買い物だと言われています。
とくに注文住宅の場合は数千万円から場合によっては1億を超えることもあります。
一般論的に、高単価の商材ほど顧客の検討期間は長く、意思決定も慎重になります。
また、高い買い物であるがゆえにお得に住宅を購入できたのか、自分の納得できる買い物ができたのかを非常に気にします。
そのため、住宅営業にはお客様の納得感を高めるためのセールストークが必要です。
問い合わせ発生から契約成立までの期間が長い
高単価な商材であるがゆえに、住宅を購入しようと思ってから実際に工務店と契約をするまで検討期間は長期に渡ります。
とくに土地探しからはじめるお客様については契約成立まで1年以上かかることもあります。
こういった長丁場の営業は他の商材ではあまり存在せず、長期間に渡って商談を行い、お客様の検討状況を前進させる粘り強さが住宅営業には求められます。
契約してからはじめて建築をはじめる
注文住宅は契約をしてから住宅の建築をはじめます。
商談をしている時点ではお客様に引き渡す住宅は存在しません。商材のサンプルを提供したり、デモで貸し出せたりする業種とは異なった営業が求められます。
モデルルームで自工務店ブランドの住宅の雰囲気自体は伝えられますが、それをいかにお客様に自分のこれから建てる住宅のイメージと合致させるか、この工務店なら良い住宅を建ててくれそうと思わせるか想像力を掻き立てる能力が住宅営業には求められます。
住宅営業のセールストークでおさえたい3つのポイント
以上の住宅という商材の性質を踏まえると、住宅営業のセールストークにおいては、次の3つのポイントを押さえる必要があります。
セールストークを展開する際も次の3つのポイントを意識しながら、営業を行ってください。
トークではなくヒアリングを重視する
営業の話術のことを「セールストーク」と呼びますが、とくに住宅営業においては「トーク」よりも「ヒアリング」の方が重視されます。
営業時には商品自体は存在しないので、「この商品はこんなにお値打ち」「こんな機能がついている」などと商品の機能やコストパフォーマンスの良さをお客様に提示して、それを検討するといった営業ができないからです。
それよりも、お客様の納得感が重要な商材なのでお客様の理想の住宅像やライフスタイルなどをヒアリングしながら、それに寄り添った営業をしていく方が成約率は高まります。
したがって、トークを上手にしようとするよりは、お客様に寄り添う、ヒアリングを上手にする、ニーズを聞き出すといったスタンスを大事にすべきです。
購入に役立つ情報を提供する
住宅は高い買い物なのでお客様は慎重に商品を購入します。
検討期間のうち具体的にお客様と建てるべき住宅像を相談しているのは全期間の内わずかです。
それよりも長いのが、お客様が家作りについて勉強したり、理想の住宅像について工務店に相談する前に自身でイメージを膨らませていたりする段階です。
こういった段階ではお客様に商材を売るというよりも、家づくりの情報を伝える営業活動が中心となります。
お客様に自工務店が開催している住宅イベントや家づくり勉強会について紹介したり、お客様の話をヒアリングしながら適切な情報提供をしたりすることが求められます。
そのため住宅営業は情報提供中心の営業になりやすいので、住宅に関する知識を習得し、それをわかりやすくお客様に伝える能力が必要です。
モノ売りではなくコト売りをする
「モノ売りからコト売りへ」という標語はさまざまな業界の営業で言われていますが、工務店の営業にはこの標語が特に当てはまります。
モノ売りとは商品・サービスを起点としてその機能やコストパフォーマンスの良さを説明してお客様に商品を購入してもらう方法です。
一方でコト売りとはお客様の欲求や課題を起点としてそれを深掘りしてそれに対応できる商品・サービスを購入してもらう方法です。
とくに高単価の買い物ほどコト売りであることが求められ、注文住宅は具体的な商品をお客様に見せて営業できないし、商品もお客様の要望によって異なるのでなおさらコト売りとしての営業が求められる商材です。
住宅営業のセールストークの4ステップ
以上のことを踏まえて住宅営業はセールストークを展開するべきですが、ではどのようにトークを展開すべきなのか、ステップごとに意識すべき点について説明します。
一般的に住宅営業は「アイスブレイク」「ヒアリング」「提案」「クロージング」の4つのステップがあるとされています。
これを言えば商談が進むという魔法のセールストークは存在しませんが、それぞれのステップで意識するべきことは多少異なります。
アイスブレイク
アイスブレイクとは初対面のお客様に対して、心を開いてもらいその後のフェーズを円滑に進めるためのステップです。
とくにコト売りとしての住宅営業はお客様の住宅に関する理想やニーズについて触れなければなりませんが、お客様との関係性が良くないときちんと聞き出すことはできません。よって、とくにアイスブレイクが重要な意味を持ちます。
アイスブレイクはお互いの自己紹介や雑談といった一見したところ本筋とは関係ない話題を行うこともあります。このときに重要なのはお互いの共通点を見つけ、お客様に話しやすいと思ってもらうことです。
お互いの共通点を見つけるとお客様は親近感を抱いてくれて色々話をしてくれますし、丁寧な接客、お客様への応答は営業として付き合いやすい人なのだという安心感を与えます。
ヒアリング
アイスブレイクでお客様とある程度話しやすい関係性ができたら、お客様の家づくりのニーズを抽出するためにヒアリングを実施します。ヒアリングの仕方によって住宅営業の巧拙は明確になります。
一番良くないのは、一問一答のような形式になってしまうことです。
営業マンが質問してお客様が答えるのを同じペースで繰り返せば、お客様は尋問されているような気分になり途中で話が弾まなくなったり、ニーズを話さなくなったりします。
こういった事態を防ぐためにお客様からの回答を受け止めて何かしらコメントする、深掘りして話を盛り上げるといったようにお客様が気持ちよく話せる雰囲気づくりが重要です。
また、お客様自身も真のニーズに気づいていないこともあるので、それを明らかにするのも住宅営業の役割です。
たとえば、「お洒落な家にしたい」という一言をとってもお客様のニーズは千差万別です。モノトーンでまとめた住宅をお洒落という人もいれば、遊び心のある間取りの家をお洒落という人もいるかもしれません。
あるいはインテリアにこだわることを指してお洒落と読んでいるのかもしれません。
住宅営業はこのようなお客様が漠然と抱いている理想の住宅像をヒアリングによって解きほぐし、具体化するのが仕事です。
提案
ヒアリングが上手くできれば、提案のフェーズにセールストークの巧拙はほとんどありません。
極端なことを言えば、お客様のニーズをピンポイントで抑えた提案書類が作成できれば、トークによって話を補足する必要がないからです。
ただし、お客様のニーズをピンポイントで抑えることは困難なので少なからず、住宅営業のセールストークが必要です。
提案の際のトークで必要なのが、お客様の要望を元に提案を作ったことを念押しすることと、提案に対するフィードバックを受けることです。
お客様の要望を元に提案を作ったことを念押しすることについて、押しつけがましくなってはいけませんが、「●●とのことでしたので、▲▼のように住宅の設計に反映しています」といったように軽くお客様の要望に基づいていることを説明して、きちんとニーズに合致していることを明らかにしてください。
提案に対するフィードバックをもらうことについて住宅は高単価な買い物であるがゆえに、一度で提案が決まる方が珍しいと思うべきです。
いずれはクロージングしなければなりませんが、お客様が提案内容について納得いただけるまで修正点がないかは確認すべきです。
クロージング
クロージングとはお客様に住宅を注文するか否かを決めてもらうステップのことを指します。
とくに経験の浅い営業マンの場合は、クロージングしようと思っても失敗すると失注となるので怖くてなかなか踏み込めないといったケースも存在します。
クロージングの仕方はそれぞれの住宅営業のスタイルによっても異なりますが、一般的には営業個人ではどうしようもない事情をからめてクロージングすると、プレッシャーを感じることなくクロージングできます。
たとえば、
「ご存じのように最近建設資材が高騰しておりまして、お見積もりについても期限がございます。この期限を過ぎると資材高騰で価格をあげざるをえない可能性があるのでご了承ください」
「●●様は●●月頃には新宅に引っ越しを済ませたいとおっしゃいいていましたが、建築スケジュールから逆算すると●●月位までにはご決断くださった方が良いかと思います」
といったクロージングの仕方であれば、営業個人の事情ではないので、営業としてもプレッシャーを感じることなくアドバイスの延長でクロージングを掛けられます。
参考:住宅営業のクロージング術
住宅営業の商談への向き合い方
以上のように住宅営業のセールストークのポイントについて説明しましたが、最後に住宅営業としてどのように商談に向き合うべきかの心構えについて3つ説明します。
商談の流れをコントロールする
ヒアリングが大事だと説明しましたが、お客様の要望を聞いていれば商談が進むというわけではありません。
とくに住宅営業の場合は営業担当側で商談をコントロールしなければ、間取りや使用する部材など結局決めきれずに打ち合わせが曖昧に終わってしまうということも考えられます。
こうした事態を防ぐためには、お客様と打ち合わせの目的を共有すること、目的に到達するように営業側で話の流れを制御する能力が必要です。
たとえば、事前にアジェンダのような資料を作ったり、お客様と打ち合わせの前に本日の商談の目的の知り合わせをしたり、前回の打ち合わせ内容を踏まえて打ち合わせできるようにメモや議事録を作成したりといった手法が必要です。
お客様との対立は作らない
お客様との対立構造を作るとコト売りの営業は難易度が高くなります。
とくに住宅営業の場合はお客様の要望をヒアリングしながら、適切な知識を提供しつつ、それを実現する提案を構築するのが仕事だからです。
たとえば、お客様から「自宅に●●をつけたい」といった要望をいただいて、明らかに予算オーバーになったり、技術的に難しかったりする場合でもすぐに営業は「無理」といってはいけません。
一度は「●●ですか…たしかに良いのですよね。」とお客様の言葉を受け止めた上で、「良い案だと思うのですがちなみに導入には●●円予算アップしそうですけど大丈夫ですか?…」「●●ということは▲▲みたいなことがしたいのですか。
その場合だと■■が今人気ですよ」といったように、やんわりと自分の提案を行わなければなりません。
具体的・事例に基づいた話をする
住宅営業はまだ完成していない住宅に関する商談を行うのですから、ついつい理想の住宅の話になって現実の家作りとかけ離れてしまったり、あるいはお客様が自分の理想の住宅像がイメージできないので話が盛り上がらなかったりといったこともあります。
こうした事態を防ぐためには具体例・事例に基づいて話をするのが有効です。
実際の施工事例や住宅の事例をもとにお客様に提案をすることにより、現実からかけ離れた商談にもイメージができなくて盛り上がらない商談にもなりにくいからです。
そのため、住宅営業のトークスキルに依存するだけではなく、会社として施工事例集やモデルルーム動画といった提案用のコンテンツを充実させなければなりません。
住宅営業はセールストークのコツを意識するだけで変わる
以上のように住宅営業のセールストークのコツについて説明しました。
住宅営業にはコト売りの姿勢が求められ、話すテクニックよりも聞くテクニックが重要です。
これを話せば必ず成功するという魔法の手段は存在しませんが、本コンテンツで紹介したポイントに注意し、トークすることによって成約率は向上するはずです。
ぜひ、セールストークのコツを意識しながら住宅営業をしてください。