優れた住宅営業は感覚的にお客様に接するだけではなく、お客様の情報やその場の雰囲気を読み、お客様の反応を試しながら商談を成約に導きます。このときに必要なスキルの一つがロジカルシンキングです。ロジカルに営業をすることによって成果を出すことはもちろん再現性の高い営業が可能となります。本コンテンツではロジカルシンキングの身につけ方について解説します。
- ロジカルシンキングとは何か?
- ロジカルシンキングを身につけるメリット
- ロジカルシンキングの身につけ方
本コンテンツの学習にかかる目安時間は5分〜10分程度です。
本コンテンツの目次
ロジカルシンキング(論理的思考)とは?
ロジカルシンキングとは論理的思考とも呼ばれ、物事を整理・分析して論理的に物事のつながりを考察して、合理的な結論に至るための思考方法のことを指します。
例えば、
- 一般的に子供連れのお客様は子供の世話のために商談に集中できない
- 明日来店されるのは子供連れのお客様である
といった2つの事実から導き出される結論は、明日のお客様には商談に集中できない可能性があるので、お子様対策が何か必要だということです。
これは簡単な論理的思考ですが、通常はいくつもの事実や法則の中から論理的な関連性を導き出して、営業にとって有意義な結論を発見するので手順はもう少し複雑です。
住宅営業がロジカルシンキングを身につけるメリット
住宅営業がロジカルシンキングを身につけるのは「再現性の高い営業トークを実現すること」、「個人の営業PDCAを回すため」です。さらに住宅営業を率いるマネージャーにとってはマネジメントの技術の1つとしてロジカルシンキングが必要になります。
営業トーク能力の向上
営業トーク能力を向上させるためにはロジカルシンキングが必要です。
数多くの商談をこなしていると中にはまぐれ当たりでお客様の琴線に刺さって商談が有利に運ぶケースがあるかもしれませんが、まぐれ当たりだけでは成約率は高まりません。まぐれ当たりを安定した当たりに変えるためにはロジカルシンキングが必要となります。
ロジカルに考えることによって、経験からこのパターンのお客様にはこの話をした方が良い、こういった準備をしておいた方が良い、お客様はこう思っていることが多いといった営業の法則が導きだされ営業の再現性が高まります。
住宅営業個人がPDCAを回せるように
ビジネスにおいてはPDCAを回すことが重要だと言われていますが、PDCAを回すためにもロジカルシンキングは必要です。特にロジカルシンキングが求められるのはCとAの部分です。
計画を練って実行するまでは論理的思考能力が低くても大丈夫です。ただし、結果がなぜそのようになったのか、どう改善すればより良い営業ができるのかについては論理的に思考しなければなりません。
もちろん、PDCAを回すということは営業だけではなく、施工管理や設計士など幅広いビジネスマンに求められることなので、できれば従業員全員がロジカルシンキングを身につけるべきです。
管理職の営業チームマネジメント能力が向上する
ロジカルシンキングを特に身につけるべきなのが管理職層です。管理職になると自分で直接営業してお客様の感触確かめられる回数が少なくなるので、営業マンの特徴、定量的なデータを元に営業マンの指導、案件を成約まで持っていかなければなりません。
そのため管理職は感覚的に営業するよりも、論理的にどうすれば営業が成功するのかロジカルに考える能力が求められます。
管理職がロジカルシンキングを身につけることにより定量的に現場の成果を理解することができて、営業チームとして適切な施策を打てるようになります。
ロジカルシンキングに身につけ方
ロジカルシンキングを身につける研修は数多開催されていますが、こういった研修に参加したからといって一朝一夕にロジカルシンキングは身につきません。むしろ日頃の業務の中にロジカルシンキングすべきことはたくさんあり、こういった課題に論理的に取り組むことによって論理的思考力は身につきます。
ロジカルシンキングを身につけるにあたって、日ごろから注意すべきポイントは次の4つです。
フレームワークを意識した思考をする
初心者のうちに重要なのがフレームワークを意識した思考を行うことです。フレームワークとは何らかのことを思考するときの型のようなもので、自分の思考の型を持っているとスムーズにロジカルシンキングができます。一方で何となく物事の論理的なつながりを考えると間違っていたり、突飛な発想をしているケースがあります。
慣れれば自然と論理的なフレームワークを使った志向ができるようになるので、初心者のうちはどのフレームワークを使って考えるか明確にする、紙にフレームワークに基づいて考えていることを書き出してみるといった地道な作業をしてください。
事実と評価を分けて考える
ロジカルシンキングをする際に、失敗の原因となりやすいのが事実と評価(個人の感想)を混同しており、結論が上手く導き出せないパターンです。
例えば、「お客様が商談の際にうたた寝をしていた」というのは事実であっても「お客様は提案に興味がないから決まらない」は営業担当の評価になります。評価から思考を始めると誤った結論に陥りがちです。この例であればお客様がうたた寝をしていたのは単に夜遅くまで働いているお客様に対して設定した商談の時間が朝早すぎただけかもしれませんし、提案内容を変化させれば成約できる可能性はあります。
実務に沿ったテーマで練習を繰り返す
ロジカルシンキングのテーマは座学だけではなく、日常業務の中に溢れています。
「例えば、Webからの問い合わせは案件化までに時間はかかるけど、どうすれば短縮できるのか?」「住宅展示場に来場したお客様のアンケート評価を高めるためにはどのような施策が必要か」など論理的に考えて結論を導き出すべきテーマは業務の中にたくさん存在します。
こういった実務に沿ったテーマで練習を積みながら、自身のロジカルシンキング能力を高めてください。
ロジカルシンキングができる人からフィードバックを受ける
初心者がロジカルシンキングを独学で身につけようと思っても困難です。自分の思考の癖や論理的でない部分については自分自身では気づきにくいからです。
社内に存在するのであればロジカルシンキングができる人が、練習中の人にフィードバックを与えることによって、勉強中の人のロジカルシンキング能力は高められます。
社内研修はもちろん1on1など社内にフィードバックの機会がある工務店の場合はこれらの制度を活かして、ロジカルシンキングを身につけるサポートをしてあげてください。
ロジカルシンキングのフレームワーク
ロジカルシンキングの代表的なフレームワークは「MECE」「ロジックツリー」の2種類です。それぞれのフレームワークについて解説します。
MECE
MECEとは物事を分解して思考する際に間違わないように、要素を綺麗に分解するためのフレームワークです。
- M:お互いに(Mutually)
- E:重複せず(Exclusive)
- C:全体的に(Collectively)
- E:漏れがない(Exhaustive)
の頭文字をとった略称で、この4つを意識することによりもれなくダブりなく要素を分解できます。
例えば、客層を分解して考えるときに、「20代」「30代」「40代」「60代」以上と分類すると「50代」が抜けているので正確な分析はできなくなります。また、「正社員」「派遣社員」「大企業社員」のように分類すると、大企業の中には正社員も派遣社員もいるのでダブりが発生して正確な分析ができなくなります。
こういった不具合を解消するためにはMECEな要素分解を心掛ける必要があります。
ロジックツリー
ロジックツリーとは目標設定や問題の原因を分析するためのフレームワークです。
例えば、売上が目標に達せず何か施策を感がなければならないシチュエーションを想像します。売上を上げたいだけではどうすれば良いか分からないので売上を「案件数」、「成約率」、「客単価」という3つの要素に分解します。
これら3つの要素をチェックして、「案件数」に問題があったことが発覚した場合、案件数はさらに「Webサイト経由」「ポータルサイト経由」「展示場への直接来場」「電話問い合わせ」といった要素に分解できます。これらの要素をチェックして「ポータルサイト経由」の数が落ちていることが発覚すればさらにポータルサイト経由がなぜ下がったのかを分解して考えます。
このように大きなテーマを小さなテーマの集合体として樹形図状に要素を分解していく方法を「ロジックツリー」と呼びます。
ロジカルシンキングを身につけて敏腕住宅営業に
ロジカルシンキングは営業の再現性を高めるためには必要なスキルです。また、特に管理職以上は会社やチームを円滑に回すために現場に張り付かずとも聞こえてくる事実から組織の状況、対策を導き出すために必要なロジカルシンキング能力は必須となります。
ロジカルシンキングを身につけるためには日ごろから論理的思考を意識しながら日常業務に取り組むこと、ロジカルシンキングができる人間から適切なフィードバックを受けることなどが必要です。