工務店マーケティングにおいて充実させるべきコンテンツの1つの施工事例があります。
施工事例にはアクセスを集める、問い合わせ、成約率を高めるといった複合的な効果があるからです。
とはいえ、ただ施工した住宅の写真を掲載しているだけではほとんどこれらの効果は得られません。
本コンテンツではより効果的な施工事例コンテンツの作り方について説明します。
- 施工事例コンテンツの効果を高めるためのコツ
- ほかの工務店の事例からわかる施工事例のポイント
本コンテンツの学習にかかる目安時間は5分〜10分程度です。
本コンテンツの目次
施工事例コンテンツはなぜ必要なのか?
施工事例は工務店のマーケティングにおいて強力なコンテンツです。
施工事例コンテンツを充実させることには主に3つのメリットが存在します。まずはこの3つのメリットについて説明します。
コンテンツ経由でのアクセスを集める
施工事例コンテンツにはWebサイトにアクセスを集める効果が期待できます。
特にコンテンツとして適切なキーワードが盛り込まれた施工事例はSEO対策効果が期待できます。
SEO対策には手間がかかりますし中長期的に取り組まなければ効果は発生しませんが、安定した無料の集客源になりえます。
とくにWebマーケティングの場合は広告費が高騰しがちで、収益をコントロールするのが難しくなるので短期的にはWeb広告でアクセスを集めつつ、中長期的には施工事例を使ったSEO対策で集客のコストパフォーマンスを高めようとすべきです。
参考:工務店向けSEO対策 基礎講座
参考:工務店集客に役立つ広告まとめ
お客様に工務店の魅力を伝える
施工事例には工務店の魅力を伝える効果もあります。
一般的な物品の販売と異なり、営業する段階では納品物が存在しないので、過去の事例をもとに自社がどのような技術や実績を持っているのかをアピールしなければなりません。
そのための方法としては施工事例が有効で、過去の事例を見せることで率直にその工務店やハウスブランドの魅力が伝えられます。
結果として顧客が工務店の魅力を認識し商談の成約率がアップする効果が期待できます。
工務店の信頼性を訴求する
施工事例は工務店の信頼性を訴求するコンテンツとしても使用できます。
施工事例を通じて豊富な実績があることや施主様と良好な関係を築いていること、建築途中過程を見せてこだわりを見せることにより、きちんとした仕事ができる工務店なのだと信頼性をアピールできます。
信頼性を訴求することはもちろん、商談の成約率アップ効果が期待できますし、事前に注文住宅が完成するまでの流れのイメージを共有することにより、成約後のコミュニケーションもスムーズになります。
施工事例コンテンツを効果的に魅せる9つの原則
施工事例コンテンツにはさまざまな効果が存在します。
そしてWebサイト、パンフレット、SNSなどさまざまな媒体に掲載できます。ただし、施工事例をただ見せるだけではユーザーの心は動かせません。
一つ一つの施工事例が魅力的に見えるようにコンテンツの魅せ方にこだわる必要があります。具体的には次の9つのポイントについて注意してください。
物件に明確なキャッチコピーをつける
Webサイト、パンフレット、SNS、いずれの媒体に施工事例を掲載するとしても、ユーザーはまずキャッチコピーとアイキャッチを見て、その施工事例を詳しく読むか否かを判断します。
そのためユーザーの興味をひくように物件の魅力を端的に伝えるキャッチコピーをつけるべきです。
たとえば、「●●市××様邸3LDK」のような形でコピーを作るよりも「車好きのこだわり満載!愛車の魅力を引き出すガレージハウス」のようなコピーの方が「車好きの人のための家なのだな」「どんなガレージなのだろう」といったように誰向きのコンテンツなのか簡単に理解できますし、興味を持たれやすくなります。
キャッチコピーを工夫することにより、さまざまなコンテンツが見られる確率が高まります。
物件が完成するまでのストーリーを大切にする
媒体のスペースにもよりますが、充分なスペースが確保できるならば、施工事例はストーリー形式で紹介すべきです。
具体的には①顧客の悩み、夢、②それを実現するための工務店の出会い、③工務店と協力して作ったコンセプト、デザイン、④契約から実際に建物が完成するまで、⑤引き渡しとその後の生活、という5つのフェーズを意識して施工事例のストーリーを紹介してください。
スペースが少ない場合は、住宅のこだわりや機能の部分だけを紹介するだけの施工事例になりがちですが、そういった施工事例は住宅のデザインやスペックに注目が集まりがちで、読者が自分事のように施工事例を読めない傾向があります。
ストーリー形式にした方が読者に工務店の魅力を伝えやすいので、掲載スペースを勘案しながらストーリー形式の施工事例を制作してください。
家主の希望と工務店のこだわりに焦点を当てる
施工事例では、住宅のスペックや職人のこだわり、最新の設備などといった要素をアピールしたくなるかもしれません。
しかし、家作りの主役はあくまでも住宅そのものではなく施主様です。そして、施工事例の読者が自身を投影するのも住宅ではなく施主様です。
施工事例では住宅そのものを紹介することも大切ですが、家主の希望やこだわり、それが実現するまでの過程について焦点を当てることも大切です。
また、工務店の魅力を読者に伝えるためには、工務店側の住宅作りへのこだわりも紙面に盛り込まなければなりません。
家主の希望、工務店のこだわりの両面から施工事例の紹介をしてください。
施主様と担当者の雰囲気を見せる
「この工務店に頼みたい」と思わせるためには家主の希望と工務店のこだわりを明記するだけでは不十分です。
加えて施主様と担当者の間の雰囲気の良さもアピールしなければなりません。
住宅を建てたい人が工務店を選ぶ際にはさまざまな基準が存在すると考えられますが、「担当者がどのような人間か?」は重要な要素の1つです。
住宅を建てたい人は「担当者は自身の意図や要望をきちんと汲み取ってくれるか?」「言いくるめられて高い物件を掴まされないか」といった不安を抱えながら商談に臨むので、施工事例を通じてこのような不安を解消させることが必要です。
一見住宅そのものと関係ないので必要ない要素と考えられるかもしれませんが、商談をスムーズにすすめ成約率をアップさせるためには必要な要素なので、ぜひ施工事例の中に盛り込んでください。
検索を考慮したキーワードを散りばめる
特にSEO対策目的で施工事例を制作する場合は検索キーワードをコンテンツの中に散りばめる必要があります。
SEO対策として文章の中に挿入したいキーワードとしては次のような候補が挙げられます。
工事・サービス名系のキーワード
注文住宅、リフォーム、リノベーション、など
地域名系のキーワード
●●町、〇〇市、△△県、など
テイスト・注目ポイントに関するキーワード
北欧テイスト、ログハウス、薪ストーブ、など
これらのキーワードに加えて、その言葉から派生するキーワードまで盛り込めれば、なお良しです。
また、この他にもキーワードツールのようなSEO対策を使って必要なキーワードを探す方法もあります。
写真は暮らしをイメージしやすく、適宜修正する
注文住宅の魅力を伝えるためには施工事例に掲載する写真も重要な要素です。
近年はスマートフォンでも充分なクオリティの写真が撮影できますが、光量が足りなかったり、余計なモノが映り込んでいたりする可能性もあるので適宜レタッチする必要もあります。
有料のツールを使用しなくても、無料ツールでさまざまな修正ができるので適宜使用してください。
また、写真撮影においては暮らしをイメージできるように撮影するのが鉄則です。家具が何もない部屋をそのまま撮影しても住宅の魅力は伝わりません。
住宅の中に家具や小物などの一定の生活感が存在した方が、読者はそこでの生活をイメージしやすく、住宅の魅力も伝わりやすくなります。
参考:竣工写真(施工事例の写真)は外注すべき?活用方法と費用相場
広さや間取り、予算感などの目安となる情報も掲載する
読者の家作りに関する予算感を持ってもらうために、住宅の広さや間取り、予算感、土地の広さといった要素も施工事例には掲載した方が良いです。
こういった要素が施工事例に掲載されていることにより、「この位の土地ならこの程度の広さの物件が建てられるのだな」「この位の広さとスペックの家ならこの程度の予算が必要なのだな」といったように具体的に自身の家作りがイメージできるようになります。
予算感や必要な土地について先に合意ができていた方が、商談が進んでいくにつれて発生しがちな予算などに関するミスマッチを防止しやすいので、商談を円滑に進める効果も期待できます。
リフォームの場合はビフォー・アフターを掲載する
ストーリー形式にするのが施工事例コンテンツの原則です。
しかし、リフォームの施工事例の場合はそれほどコンテンツに厚みを持たせられないことがあります。
リフォーム工事であまり紹介できる内容が存在しないときは、ビフォー・アフターで施工事例を紹介することを意識してください。
リフォームに興味がある読者の施工事例に関する関心毎は、どのような住宅がリフォーム工事をするとどの位変化するのかというビフォー・アフターの事例です。加えて、施主様のお困りごとやその後どのように生活が改善されたのかといった要素を盛り込めればなお良しです。
各種SNSも合わせて活用する
施工事例といえば、Webサイトに掲載してネットユーザーに見せる、営業ツールとして施工事例集を作ってそれをもとに接客するといった方法が考えられますが、施工事例をSNSに掲載するのも有効です。
たとえば、Instagramに施工事例を掲載、そこから見学会の申し込みフォームに誘導して、イベント参加者に営業をして成約を獲得するといった方法も考えられます。
SEO対策用のコンテンツはプル型の情報提供なので一度にたくさんの問い合わせを獲得するのに向いていません。
対して、X(旧Twitter)やInstagramのようなSNSツールはフォロワーに一斉に情報を配信できるプッシュ型のツールなので魅力的なコンテンツであれば一度にたくさんの問い合わせ獲得が期待できます。
せっかく施工事例をつくるのであれば、一つの施工事例をさまざまな所に掲載して、マーケティング・セールスの両方の効果を高めるべきです。
参考:工務店のSNS活用術
施工事例の魅力を伝えるためにはインテリアに関する造詣がカギ
以上のように9つのポイントを踏まえれば施工事例を魅力的に伝えられますが、中長期的に取り込まなければならないことは、インテリアに対する造詣を深めることです。住宅の魅力を伝えるためには、その空間に適したインテリアを配置しなければなりません。
そのためには3つのポイントを抑える必要があります。
インテリアショップとのパートナーシップを組む
住宅・インテリアの両方を顧客に提供できた方が、客単価は上がり、価格競争を回避できます。そのため、パートナーシップを組める家具・インテリアショップを見つけることは、施工事例コンテンツを上手にまとめるだけではなく、経営の観点からも必要です。
ただし、どんな家具・インテリアショップでも良いわけではなく、自工務店や住宅のブランドコンセプトと合致している企業かつ、工務店向けの家具販売に融通が利く企業と提携するべきです。
インテリアコーディネーター・空間デザイナーを内製化
施主様との打ち合わせで住宅だけではなく、家具・インテリアの提案ができるようにインテリアコーディネーター・空間デザイナーを内製化することも検討してください。
雇用するほどでもない場合は、近年フリーランスとして活動しているインテリアコーディネーターや空間デザイナーも存在するので、こういった方々とパートナーシップを組むのも良い方法です。
社内に蓄積している事例を整理・まとめる
ただ、工務店とインテリアショップが提携してコーディネーターがそれらをもとに空間を提案するだけでは、その住宅ブランドらしさがブレがちです。住宅ブランドの魅力を活かしつつ、コンセプトを一貫した提案をするためには、空間コーディネート事例の蓄積が必要です。
空間コーディネート事例とはすなわち、インテリアまでも含めた施工事例コンテンツのことを指します。こういった事例を蓄積し、それをベースに提案することにより誰が提案しても一貫したコンセプトでの提案が可能となります。
参考にしたい施工事例
では、工務店各社どのように施工事例を紹介しているのか、いくつかの事例について紹介します。
アイ工務店
施工事例が検索できるように、施工事例にハッシュタグを付与し、ハッシュタグ検索できるようになっています。
キャッチコピーもシンプルで明確で、どのような内容なのか一目でわかる構成になっています。
施工例事例の中身も施主様のデータや敷地・延べ床面積などの要素がきちんと掲載されています。また、写真1枚につき1つのコメントがあり、どのような点が特徴・魅力なのか一目で分かるように紹介されています。
一条工務店
大手ハウスメーカーであっても施工事例は重要なコンテンツなのでWebサイトにきちんと掲載しています。
施主様の住宅づくりに関する希望やそれがどのように家作りに反映されているのかが理解できるように文章が掲載されています。
また、施工事例コンテンツのすぐ下に「オーナーズボイス&実例集」のカタログ請求CTAが配置されているので、きちんと問い合わせを狙える構成にもなっています。
谷口工務店
「注文住宅」、「リフォーム」、「庭&外構」といった3つのカテゴリから施工事例を検索できるようになっています。
施工事例自体の説明文章は少なめですが、ページ下部にYouTubeのルームツアー動画は配置されているので、具体的に施工事例の様子がイメージできる内容になっています。
感動ハウス
通常の施工事例とは別に「感動ストーリー」と呼ばれる施主様の希望や家作りに関するこだわりとそれに対する担当者のコメントが掲載されています。
事例を通じて施主様の家作りに関する思いだけではなく、担当者との良好な関係性まで伝えるコンテンツです。
施工事例自体は住宅のスペックを示す数行の文章と写真といった形でシンプルになっていますが、感動ストーリーを合わせて読むことによって、事例に深みを感じ、工務店の魅力が伝わる構成になっています。
施工事例コンテンツで工務店の魅力に厚みを持たせる
施工事例はマーケティング、セールスの両面から必要となるコンテンツです。
施工事例を掲載することにより、Webサイトのアクセスアップ、問い合わせ率、成約率アップといった効果が期待できます。
ただし、施工事例写真をそのまま撮影して掲載しているだけといったコンテンツではその魅力を伝わりません。
施工事例の魅力を伝えるためには本コンテンツで紹介した9つの原則を守る必要があります。
また、施工事例の空間を魅力的に見せるためには9つの原則を守るだけではなく、中長期的には家具・インテリアショップとの提携が必要です。良いショップと提携することにより、施工事例が魅力的に見えるだけではなく、空間全体を魅力的に見せることによる客単価アップ・価格競争会費効果も期待できます。
ぜひ魅力的な施工事例コンテンツで工務店のファンを増やしてください。