「エンゲージメント」とは企業と消費者の関係性・つながりのことを指します。近年のマーケティングでは消費者に商品やサービスを認知してもらうだけではなく、良い印象を持ってもらう、ファンになってもらうためのエンゲージメントの向上が必要です。工務店のマーケティングを実施するうえでも重要な概念なので、本コンテンツではエンゲージメントマーケティングとは何かについて解説します。
- エンゲージメントマーケティングとは何か
- 工務店が顧客のエンゲージメントを高める手法
- 顧客のエンゲージメントを向上させるポイント
本コンテンツの学習にかかる目安時間は5分〜10分程度です。
本コンテンツの目次
エンゲージメントマーケティングとは?
エンゲージメントとは英語の「engagement」から来ています。主に顧客との関係性について使われる言葉で、エンゲージメントが強い/高いほど顧客との関係性が強固、商品・サービスに愛着を持っていると評価します。
エンゲージメントマーケティングとは、顧客とのつながりを大切にし、顧客とのエンゲージメントを獲得することでブランドの進化や売上向上を目指すマーケティングのことです。
2000年代はじめにマーケティングにおいてエンゲージメントの概念が導入され、2009年頃から広くマーケッターの間で定着しました。現代のマーケティングを実施するうえで重要性はますます高まっています。
エンゲージメントが注目を集める背景
「エンゲージメント」が注目を集めている背景には消費者の購買行動の変化が挙げられます。
従来のマーケティングにおいては企業から消費者へのコミュニケーションは一方通行だと考えられていました。すなわち、テレビCMや雑誌広告、新聞広告といったマスメディアを使用し、世間での認知度を高め良い印象を持ってもらうことが重要だったのです。
しかしながら、インターネットが普及した現代においては、消費者も自分で情報収拾ができるため、マスメディアを用いた従来のマーケティング手法だけでは十分に顧客を獲得できなくなりました。
また、SNSの発展によって、消費者は商品・サービスに関する情報を収拾するたけではなく、発信することができるようになりました。さまざまな情報が溢れかえるなかで、消費者に興味関心を持ってもらい、購入したいと思ってもらえるためには、いかに自社の情報に接触してもらい、興味関心を持ってもらうかが重要になりました。
すなわち、認知度を高めるよりもピンポイントな顧客との関係性づくり、つまりエンゲージメントをいかに高めるかが大切になりました。
工務店とエンゲージメントマーケティング
工務店にとってもエンゲージメントは重要です。特に住宅という商材は高価で、マンションや建売住宅ではなく、高価な注文住宅を建てる消費者はそれなりに住宅に対するこだわりや工務店に愛着を持っていると考えられます。
こうした顧客を育成するためには、ただ工務店の認知度を高めるだけではなく、エンゲージメント向上がより重要な課題となっています。特に消費者側からすれば工務店の情報はインターネットを活用すればいくらでも取得できるので、商談を成功させるためにはいかに工務店のファンになってもらえるような施策を展開するかが求められます。
工務店が実践できるエンゲージメントマーケティング手法
「エンゲージメント」という目標を達成する手段は、小さな営業の気遣いであったり、メルマガであったり、一つ一つは一見したところ大した手段には見えません。
しかし、エンゲージメント向上のための細やかなテクニックを使ったり、定期的・高頻度に顧客にアプローチしたりすることによって、漫然とこれらの施策を実施している工務店とは成果に大きな違いが現れます。工務店がエンゲージメントマーケティングに取り組む手法について紹介します。
「コンテンツ」を使って情報提供する
住宅という商材は検討期間の長い商材の1つです。そして、高額であるがゆえに顧客も相応の納得感を持って購入したいと思っています。こういった商材では「コンテンツ」を活用した情報提供が有効です。
自社のアピールや契約単価を上げるために必要な情報に留まらず、「自分にあった工務店の選び方」や「安く住宅を作る方法」といった、消費者の気になることで、自社の利益にならないのでは?と一見思えるようなことまで情報提供した方がエンゲージメント向上は期待できます。
また、これらのコンテンツをWebサイトに掲載して、ネット上から新規顧客を集める手法は「コンテンツマーケティング」と呼ばれており新規集客でも有効な手段の1つです。
家づくりのストーリーを伝える
顧客が工務店の建てる住宅に愛着を持つのは、その住宅が魅力的だと思うからです。ただし、顧客は専門家ではないので、住宅のスペックや使用している資材などの情報だけでは、その魅力は認識できません。
顧客に魅力を伝えるためには定量的な情報ではなく、ストーリーが必要になります。その住宅ブランドはどのようなコンセプトで誕生したのか、家づくりに携わる職人がどのような思いで仕事をしているのか、お客様にその家でどのような暮らしをして欲しいのかといった情緒的な情報をお客様に伝えます。
これらの情報を伝えるのは難しいので、YouTube動画やアピールブックといった各種販促物に落とし込むのも良いです。
SNSなどを通じて顧客と対話する
エンゲージメントを向上させるためには双方向のコミュニケーションを意識する必要があります。マスメディアを使って一方的に工務店の情報を伝える手法だけでは効果が出なくなり、SNSなどを通じて顧客とのコミュニケーションを行う工務店も増加しています。
たとえば、定期的にインスタLIVEのようなイベントを開催したり、OB顧客専用のハッシュタグを作ってOB顧客とのコミュニケーション窓口にしたりといった手法が考えられます。顧客と双方向で良好なコミュニケーションを行うことはその顧客だけではなく、それを閲覧しているだけの消費者に対してのエンゲージメント向上効果も期待できます。
参考:インスタグラムの使い方 基本編~工務店の活用事例20選~
工務店が顧客のエンゲージメントを向上させるポイント
エンゲージメントを向上させるためには上で挙げたような施策を展開するケースがありますが、これらの施策を表面点になぞるだけでは効果は低いと考えられます。エンゲージメントマーケティングを向上させるためには前提として、次の3条件の整備が必要です。
こまめな顧客管理を実施する
エンゲージメントマーケティングを成功させる前提として、こまめな顧客管理が必要です。
マーケティングに限らず、ファン客を増やすためにはきめ細やかな顧客フォローが必要です。以前何らかの工務店のイベントに来てくれたお客様か、アンケートにどのような要望を書いていたか、前の商談でどのような話をしていたかなどの情報が揃っていなければ各顧客にきめ細かく対応したフォローは実現できません。
しかし、複数部署が関わる場合、他部署で行った対応は他の部署には分かりませんし、同じ営業担当が接客する場合でも細かい顧客情報は忘れていることがあります。
こういったケースを防止するためには顧客管理システムの導入が有効です。顧客管理システムにより複数部署間で一組の顧客について多面的に情報共有することにより、顧客の要望を抜け漏らさない、かゆい所に手が届く対応が可能となります。
参考:見込み顧客管理のポイント
サービス品質・接客力を高める
顧客のエンゲージメントを高めるためには、工務店のサービス品質・接客力を高める必要もあります。営業的な観点からは接遇力研修などを実施して営業担当の立ち振る舞いを洗練させる手法も考えられますが、マーケティング的な観点からはツール類を整備して最低限の接客レベルを高める施策もあります。
経験の浅い営業担当はアプローチブックをもとにお客様に伝えるべきことに抜け漏れがないようにする、メルマガやニュースレターで定期的に情報提供をするといったように、工務店側で営業が動きやすいようにフォローして全体のサービス品質・接客力を高めます。
参考:アプローチブックを活用した住宅営業手法
住宅営業のロープレのポイント
エンゲージメントを測定する
エンゲージメント向上を目指すのであれば、エンゲージメント測定が必要です。展示場での案内、設計計画を結んだ後、家を引き渡した後など節目にアンケート調査をしてエンゲージメントを測定します。
エンゲージメントは個人の心情なので定量的に把握するのが困難ですが、どの業界でもNPSという指標を使用しています。
NPSとは顧客ロイヤリティ(≒エンゲージメント)を図るための指標で、「この商品やサービスを知人や同僚にどれぐらいおススメしたいですか?」と質問して0点から10点の11段階で評価してもらいます。そして、9,10点をつけた人を推奨者、0~6点を付けた人を批判者として「推奨者の割合―批判者の割合=NPS」と求めます。
参考:お客様満足度アンケートの取り方【住宅イベントの振り返りに】
エンゲージメントマーケティングでファンの多い工務店に
工務店マーケティングにおいて重要なのは認知度を高めることからエンゲージメントを高めることに徐々にシフトしています。
そして、エンゲージメントマーケティングは特殊な手法ではなく、日々お客様が工務店のファンになってくれるようにどれだけ工夫しているかといったことの積み重ねです。
本コンテンツを参考にぜひ自工務店のエンゲージメント向上施策について見直してください。